第五章 仲間
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じゃ、あいつから倒すかあ」
場慣れしているためか、少しのんびりムードのカズミ。
先ほどあんなに、数が多過ぎるだろうと文句をいっていたのに。
だが……
ごば
音。
硬く巨大なゼリーの中へと手を突っ込ませた、といえば近いだろうか。
それは、破られた音であった。
異空と現界の境が。
薄いところが破られて、穴が空き、その中にヴァイスタの太く長い腕が吸い込まれていた。
「やべ!」
舌打ちしながら、両手のナイフを素早く構え、走り出そうとするカズミ、
の、脇をアサキが駆け抜けていた。
おおおお、と雄叫びを上げながら。
ヴァイスタへと向かい、走りながら剣を抜いた。
にちにちと粘液質な音を立てながら、ヴァイスタが現界との境へと突っ込んでいた腕を引き抜くと、
どさり、
ランドセルを背負った女の子が、色調の反転した白いアスファルトへと落ちて、くっと呻いた。
顔を上げ、目の前にいる真っ白な巨人の姿を認識した女の子は、張り裂けんばかりに口を開き、街中に届かんばかりの凄まじい悲鳴を上げた。
だが、悲鳴半分で、女の子は喉が詰まったかのように苦しみ悶え始めた。
首に、ヴァイスタの腕が巻きついていたのである。
ぬるぬるしているとはいえ、触手のような長い腕をくるり一周させて、がっちり固定させた状態で締め上げているのだ。
ただの人間、しかも小さな女の子が、どうしてたまろうか。
このまま一瞬にして首の骨を砕くことも可能なのであろうが、しかしヴァイスタは、少しずつ力を込めて行く。
完全に絶望させてから食らうために、ということなのだろう。
それがヴァイスタなのである。
だが、
そうはさせない!
と、アサキは、ヴァイスタの背中へと自らを突っ込ませた。
「その手を離せええええええ!」
雄叫び張り上げながら、体当たり。
突っ込む勢いをまったく殺すことなく、自分の肩をヴァイスタの背というか腰の辺りへとぶつけた。
だが、ヴァイスタの巨大な身体は、ぴくりとも揺らぐことなく、ぼよん、とした弾力に、アサキの勢いは、ただはね返されただけだった。
踏ん張り、右手の剣を背中へと叩き付ける。
焦るあまり、魔力を込めるのがおろそかになってしまい、これもまた弾かれるだけだった。
振り向くこともせずにただ女の子の首を締め続けるヴァイスタであるが、しかし、認識はしているのだろう。
アサキのことを。
鬱陶しい存在であると。
直後、ヴァイスタの空いている方の腕が、音もなくアサキを襲ったのである。
「ぐ」
アサキの呻き声。
顔を、苦痛に歪めた。
左の二の腕、ちょうど防具のない部分の
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