第五章 仲間
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カズミが、両手のナイフをクロスさせて、
治奈が、槍で、
さらに、正香が、鎖鎌の鎌で、
それぞれに、アサキの顔の前で、ヴァイスタの触手を受け止めていた。
ヴァイスタのもう一方の肩からも腕が打ち出されて、先端の裂け目が開いて、邪魔したカズミの頭へと、食らい付こうとする。
カズミは軽くしゃがみながら、右腕を払って攻撃を跳ね上げた。
「このカズミ様を、なめんじゃねええええっ!」
叫ぶと、両手に構えたナイフを構えたまま、膝を曲げて地を蹴った。
足先から頭までを軸に、くるくる回転しながら、ヴァイスタの懐へと自らを突っ込ませる。
ぶちゅぶちゅぶちゅと、ゼリーを手で握り潰すような音がしたかと思うと、カズミの身体はヴァイスタの背中側へと抜けていた。
着地したカズミは、
「さっすが対ヴァイスタ用にバージョンアップされただけあんな、これ。楽々じゃん」
両手のナイフを見つめながら笑みを浮かべたが、それも一瞬、腰の両側にナイフを収めると前を向いて、
「さあて、昇天だ。……イヒベルデベシュテレンッ、ゲーナックヘッレ!」
二本のナイフに、千切りのようにズタズタに切り裂かれ動きを止めているヴァイスタの背中に、カズミの薄青く輝く右手が、そっと触れる。
「くたばりやがれえ!」
ちち、ち、
魚の焼けるような音を立てながら、無数に切り刻まれたヴァイスタの肉体が、元に戻っていく。
映像をコマ飛ばしで逆再生しているかのように。
先ほどのアサキの時と同様に、顔にあたる部分に小さな口が出来ていた。
その口の両端が釣り上がって、笑みと思われる形状を作ると、続いて頭頂からキラキラ光る砂になって、一瞬にして全身が消滅、空気に溶けて消えた。
「守ってくれてありがとう、みんな、カズミちゃん。助かった」
アサキが胸に手を当てて、安堵のため息を吐いた。
「おう。全員にハナキヤのケーキ一個ずつな」
カズミが、にひひと悪戯っぽく笑った。
「ええーーっ! ……ハナキヤかあ。残り少ないお小遣いがあ」
アサキは、脳内でパタパタ飛んでいく財布を追うように、天へと手を差し出した。
「よし、それは後だ。アサキ奢りの祝勝会の話は。残りを、ぱぱっと片付けちまおうぜ。あたしと治奈はあっち、正香と成葉はそっち任せた!」
カズミと治奈、
正香と成葉、
みな頷き合うと、素早く二手に散開し、ヴァイスタの群れへと飛び込んでいった。
「あ、あの、カズミちゃん、わたしは?」
一人残ったアサキが、きまり悪そうな笑みを浮かべて、自分の顔を指さしている。
「お前はやっぱりまだ未熟だから、そこで応援しつつ先輩たちの戦いを勉強してろ!」
「はい……」
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