第五章 仲間
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さな口が。
その口が、にいいいいっ、と嫌らしい笑みを作ると、
頭頂が、きらり金色に光り、さらさらと金色の粉になり、風に溶けた。
頭頂だけでなく、頭、首、胸、腹、もも、膝、見る見るうちに輝く粉と化して、跡形もなく消えた。
「勝ったか。……アサキのバカに足を引っ張られつつも。さすがあたし」
カズミは腰に手を当て、小さく鼻で息を吐いた。
「わたしがファームアッパー拾ったからでしょおお!」
「まあその効果もあるな。……たぶん微妙に強くなったというだけなんだろうけど、その微妙が感覚として大きいよな」
「そうだね」
「このファームは本物だ。早く治奈たちにも届けよう」
「そうだね」
「よし、行くぞ!」
カズミは胸の前でぐっと力強く拳を握った。
「うん」
アサキも真似をして、拳を握った。
「うっしゃああ、天王台第三中魔法使い、反撃開始だーーーーーっ!」
「反撃開始だーっ!」
二人は、腹の底からの叫び声を上げながら、異空の瘴気に溢れた歪んだ町並みの中を走り出した。
4
現界とは色調が完全に反転した、青いはずの空はオレンジ色で、アスファルトの道路は真っ白で、さらには、ぐにゃりぐにゃりと歪んで見える、奇妙な町並みの中。
漂う瘴気と狂気の中。
カズミたちは、ヴァイスタの群れと戦っていた。
ヴァイスタ、ぬめぬめ粘液質で白い身体の、のっぺら坊みたいに顔のパーツのない、不気味な巨人である。
ぬめぬめ真っ白な身体から、なんの予備動作もなく突然、長い腕が槍状に硬く鋭く突き出された。
「と、あぶねっ!」
驚きの声を発しながらも、カズミは身を捻り、紙一重でかわしていた。
「カズミちゃん! 大丈夫じゃった?」
心配の声を掛ける明木治奈。
「ったりめえだろ。こんくらい」
カズミは、余裕の笑みを見せた。
「確かに、この謎ファーム、身が軽くなった気がするけえ、じゃけえまだ相手の方が遥かに多い。油断しちゃいけん」
「だから油断しちゃいねえよ。あたしの方が新ファームの先輩だぞ」
それをいったら、一番の大先輩はアサキということになるわけだが。
「うわ!」
その大先輩の悲鳴である。
ヴァイスタからぶんと突き出される触手状の腕を、驚きの声を出しつつ、なんとかぎりぎりでかわしていた。
ヴァイスタの、伸びた腕の先端部、人間でいう拳にあたる部分には、すっと亀裂が入っており、無数に生えている小さな歯が、ガチガチガチガチと、凶暴に打ち鳴らされている。
アサキの避けるタイミングが、一瞬でも遅れていたならば、身体の一部を噛みちぎられてもおかしくはなかっただろう。
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