その38
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ルトの方だが、技術面や素養の面では、ナルトもサスケも今回の試験で中忍に昇格しても問題はない。
しかし、カカシとしては、ナルトやサスケの抱える問題と境遇故に、二人には今回の中忍試験には参加して欲しくなかった。
二人の成長自体は喜ばしいが、もう少し手元に。
出来る限り、カカシが守ってやれる場所に。
そんな身勝手な思いに、カカシは複雑な気持ちになる。
しかし、子供の成長は、こちらの想いを越えて行くもののようだ。
心ならずも、短期間で手放すことになってしまった。
自分の力不足を改めて痛感する。
「来たね」
気配を察し、感傷を断ち切って物思いから立ち直り、振り返って声をかければ、カカシから数歩距離を取った所で、珍しく神妙な様子で所在なさげに佇みながら、ばつが悪そうに仏頂面を更に顰めているサスケが応えた。
「…こんな所にオレを呼び出して、一体何の用だ」
いつものような尊大で生意気な物言いも、場所柄を気にしてか、幾ばくか声に力がない。
そんな捻くれた素直さも、まるで昔の自分を見ているようで、だからこそ、己と同じ轍を踏まないで欲しいと切に願う。
しかし、いち早くカカシの手を離れることになったサスケは、もう、傍で見ていてやる事が出来なくなってしまったから。
本当は、こんな悔恨を晒す事など、忍としては恥でしかないのだが。
自分に似ていて、うちは一族のサスケにだからこそ、話すべきだと判断する。
サスケが自分を顧み、力に溺れる事がないように。
ナルトを守る力が欲しいと願ったサスケなら、きっと受け止め、己の糧に変えることができるだろうから。
「お前はナルトやサクラに先駆けて、中忍昇格前に一足早くオレの手を離れることになったからね。今まで通り、担当上忍としてのオレのフォローは続くが、一応、餞別代りに昔話でもしておこうと思ってね」
カカシの胸を今でも刺す悔恨を、サスケが抱える事がないように。
守り切る力の無いカカシよりも、強く、守る為の力を得られるように。
お節介であるのは、百も承知ではあるのだが。
表向きはカカシが責任を持つ事になってはいるが、それは名だけだ。
実質的には、サスケの身柄はヒルゼンが握る。
そこに否はないものの、少し複雑な気持ちであるのは確かでもある。
ナルトもサスケも、それにサクラも。
カカシが初めて合格させて受け持った子共達だから。
カカシの言葉に何を思うのか。
オビトよりは自制して、イタチよりは素直に自分の感情を表に出すサスケの黒い眼が、躊躇うように微かに揺れた。
そして、サスケにしては神妙な態度で、絞り出すように訊ねてきた。
「こんな所でか?」
既に、場所柄から、カカシの話が面白い物ではない事を察しているのだろう。
サスケの表情は嫌そうに顰められていた。
「こんな所でだからだよ。餞別だからね」
重
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