その37
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らしくもなく、迷うように躊躇いがちな小さな声音に、イルカの気が引き締まる。
「何をだ。先生に答えてやれることなら、何でも答えてやるぞ。教師としても、一人の忍としてもだ」
サスケの背を押すように、太鼓判を与えてやれば、意を決した表情で、ほんのりと頬を染めて、サスケが尋ねたいと思った事をイルカに打ち明けてくれた。
「誰かを護るとは、どういう事だ」
強がるあまりにイルカを睨み付けてきているが、そんな姿にこそ、サスケの年相応の背伸びを感じて、微笑ましくなった。
サスケのぶっきらぼうな口調もこういう生意気な態度も、必死になって自分を取り繕う強がりなのは承知している。
だからこそイルカは、素直に感慨深さに束の間浸った。
一族間の確執に思い悩んで、自ら孤立を望んでいるように見えたサスケが、まさか、こんな事をイルカに尋ねて来てくれるようになるとは。
じーんと震える胸に、教師冥利に尽きるとは、こういう気持ちだろうと実感する。
そしてだからこそ、イルカは教職を離れようとは思えない。
だがしかし。
だがしかしなのだ。
「誰かを護る、か」
「ああ」
深い感慨を込めて繰り返したイルカに肯定を返し、真っ直ぐな視線で答えを求めてイルカを見つめているサスケに、かけてやれる言葉をイルカは持たない。
何故ならば。
「サスケ。お前は頭がいいし、察しもいいから、きっと、もう自分でも薄々感づいていると思う。だから先生も言葉を濁さずはっきり言うが、お前のその疑問は、確たる答えの無い類のものだ」
イルカのその言葉に、サスケは不服そうにぎゅっと眉を寄せた。
そんなサスケの表情に、イルカは聞き分けの無い駄々っ子の面影を見てしまう。
だが、イルカの知っているサスケは、本当に優秀で、ただの駄々っ子で収まる器ではない。
流石はうちはと、そう思わせる聡明さと才能を秘めているのだ。
ただ、そう。
そういう事をイルカが教えてやる為には。
「何より、先生は女性に縁がないからなあ。きっと何かを護る事を考え始めたお前の力には、なってはやれないと思うんだよ。情けないけどなぁ」
へにょり、と眉を下げつつ、自分でも情けなさを噛み締めながらそう打ち明ければ、見る間にサスケの瞳に納得の色が浮かんでいった。
正直、その納得はとても痛い。
だが、だがしかし!
見くびってもらっては困る。
「でも!確かに先生は教師だからな。お前が自分の答えを考えるきっかけになる事くらいなら、先生でも言ってやれるぞ。それくらいしかしてやれなくて済まないとも思うが。それでも良いなら教えてやる」
敢えて念を押してやれば、サスケらしい強気な表情で呆れたように催促してきた。
「初めからそこまであんたに求めていない。きっかけ程度が掴めればいい方だと、最初から判断していた」
「何だと、この!」
思わず生意気な
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