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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第11話:今はまだ早すぎる
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に掴み掛ろうとする奏だったが、それよりもコンマ数秒早く颯人は転がるようにしてソファーから離れその場を逃げ出した。奏は負けじとソファーから飛び上がり逃げる颯人を追いかけていく。

 背後から追跡してくる奏の姿を肩越しに見て、颯人は心底愉快と言った様子で高笑いを上げた。

「わぁっはっはっはっ! また物の見事に引っ掛かってくれたなぁおい! ほ〜んとお前ってば騙されやすいんだから、バ奏は未だ健在か?」
「うるさい!? もういい加減我慢の限界だ、待てコラァァッ!?」
「おっ! いいねぇ、あの頃を思い出す。俺を捕まえられるか?」
「やらいでかっ!?」

 高笑いする颯人を奏が追い掛ける。凄まじい速度で走り去る2人はあっと言う間に司令室を出て二課本部の廊下の奥へと消えていき、後に残された翼達は2人が出ていった扉を呆然と眺めていた。

「何か、嵐みたいな人でしたね?」

 意外な事に最も早く我に返った響がそう呟くと、翼がそれに同意するかのように頷き返した。

「って言うか私、奏があんな風に手玉に取られたところ初めて見た」

 何時もは主に翼を一方的に揶揄ってばかりいる奏が、逆にいい様に手玉に取られる様は翼にとってかなり衝撃的な光景だった。

 その一方で、弦十郎はある事に気付いていた。

「しかし、その割には今まで見たことないくらいいい顔をしてたな、奏の奴」
「えぇっ? あれでですか?」
「そうねぇ。何て言うか、輝いてたわねぇ」

 弦十郎の見解に怪訝な表情になる響だったが、了子の言葉に翼は内心で頷いていた。了子の言う通り、奏の顔は今まで見たことないくらい生き生きとしていたのだ。

 奏が二課に所属してから丸5年。その間に自分では敵わない存在だと認識させられた彼女を手玉に取り、今までに見せたことないくらい生気に満ちた表情をさせてみせた颯人。

 そんな彼に対し、翼はある種の尊敬と畏怖、そして僅かな嫉妬を感じていた。




 ***




 一方、唐突に追いかけっこを始めた颯人と奏は縦横無尽に二課本部を走り回っていた。その間2人の距離は正に付かず離れず、絶えず一定の距離を保ち続けて二課本部の地下施設を隅から隅まで走り続けた。

 遂には体力が限界を迎え、2人仲良く辿り着いた先にあった休憩所のソファーに隣り合って腰掛けた。

「はぁ……はぁ……はぁ〜〜、はははっ。やるじゃねえか。流石に5年間ノイズと戦い続けて大分鍛えられたか。よく粘ったじゃねえか」
「そりゃ、こっちのセリフだよ。あ〜〜、チクショウ。いい加減とっ捕まえられると思ってたのに」

 もう仕返しする気力もないのか、すぐ隣に居る颯人に対して何のアクションも起こさない。肩が触れ合うか合わないかと言う距離で互いに隣り合って息を整
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