★=職場体験編= ネームセレクト
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た。それに伴い、嘗て最も焦がれた真剣同士の斬り合い――真剣勝負の場も減っていった。
今やヒーローで剣をまともに扱える者はおらず、真剣を振り回し人を斬りたい者は総じて裏の存在。それも、殆どが武器を掲げて思い上がっただけの素人だ。今回斬った男もヴィランとしてそこそこの実力がある剣士だという話だったが、拍子抜けにも一太刀で血の海に沈んだ。
男は別段自分を善とも悪とも定めてはいないが、世間ではどうやら偽善に分類されているらしい。くだらない、と思う。別に斬る相手などどうでもよい。そこに死合いの緊張感が欲しいだけだ。
男は自分の手を見る。
ここ最近、皮膚の老化が早まってきた。
嘗てあの男に与えられた幾つかの個性によって身体能力は全盛を保ってきたが、代償に支払ってきた寿命の残量がそろそろ限界を迎えようとしているのだ。死ぬ間際まで全盛の身体でいられれば、別段これ以上長く生きようとも思わない。人斬りを楽しめる時代は過ぎ去り、もう戻れないのだ。ならば仕舞いにするのも悪くない。
最後に死合う相手はどうするか。
剣士ではないが最強と名高いヒーローのオールマイトか……或いはこのご時世に人斬りを行っているというステインというヴィランに賭けてみるか。
と――。
「客人か。名乗るがよい」
「お初にお目にかかります。黒霧と申します。突然の来訪をお許しください」
振り返らずとも気配で理解する。
空間移動タイプの個性だろう。そこには靄が服を着たような男がいた。
「嘗てオール・フォー・ワンの護衛として剣を振るった男、ヴィラン名『ソードブレイカー』……『彼』の紹介にて参りました。貴方にある男を斬って頂きたく……」
「ほう……間接的とはいえあの先生からの仕事とは何十年ぶりか……」
自分にとって最も都合のいい雇い主にして悪の権化、オール・フォー・ワン。オールマイトに敗れて以降姿を消したと聞いていたが、その時にはソードブレイカーはとうに彼の統率を離れていた。申し出た訳ではなく、面白い仕事を回す機会がないからと互いの同意の上での決別だった。実に清々しい別れだったし、また働いてほしいというなら断る気はない。
「しかし、黒霧と申したか……わしもどうせやるなら楽しい仕事にしたいし、老い先も短いでな。つまらぬ仕事であったならお断りじゃぞ」
「お気に召されるかどうかは分かりませんが……この男を斬って欲しいのです」
「ふむ? 子供……ふぅむ……」
差し出されたターゲットのプロフィールと写真を見て、暫くソードブレイカーは唸った。子供という時点で余り気が進まない仕事だったが、いくつか気になる点があり、捨て置くのもつまらないと思ったからだ。
「剣道経験者でありながら、個性の影響で公式試合出場を認められず……
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