第二章
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その彼がだ、こう言ったのだ。
「その詩人を連れて来るのだ」
「この王宮に」
白い肌と整った顔立ちの男が応えた、宰相のジャアファルだ。傍には黒人の髭のない大男である諸経費とマスルールもいる。
「そしてですね」
「詠わせるのだ」
「詩を」
「そうだ、是非な」
「カリフよ、あえて申し上げますが」
ジャアファルはハールーンに慎んだ態度で意見を述べた。白い服は清潔でありそれが彼の容姿をさらに映えさせている。そし宮廷の白に金や様々な宝玉で飾ったその中で言うのだった。
「ヌワースという男は」
「酒に色にか」
「人妻にも男にも」
「ははは、小さなことだ」
ハールーンはジャアファルが話したことは笑ってよしとした。
「その様なことはな」
「アッラーの前ではですね」
今度はマスルールがハールーンに言ってきた。
「そうだというのですね」
「そうだ、人一人の悪なぞだ」
所詮はとう口調での言葉だった。
「アッラーの前では小さい」
「そうしたものであり」
「才の前ではな」
「その罪も」
「尚更どういうことでもない」
こう言うのだった。
「だからな」
「構わないですか」
「余はそう考えている」
カリフ即ちアッラーの代理人である自分はというのだ。
「だからだ、すぐにここにだ」
「連れて来るのですね」
「今命じた」
これがハールーンの返事だった、それでだった。
そのうえでヌワースを呼んだ、すると彼はハールーンに早速言った。
「では私はこのままで」
「このままでか」
「はい、態度はです」
それはというのだ。
「変えるつもりはないので」
「酒も色もか」
「どちらも」
カリフにも悪びれず言うのだった。
「構いません」
「そう言うか」
「はい、それでも宜しいでしょうか」
「余はわかって呼んだのだ」
ハールーンはヌワースにカリフの座から鷹揚に応えた。
「そなたをな」
「では」
「よい詩を詠う度に褒美をやる」
このことを約束した、今。
「ではな」
「それではですね」
「そうだ、酒も色も楽しめ」
ハールーンは自らそれを許した。
「そうしてだ」
「詩をですね」
「好きなだけ詠うのだ」
「それでは」
ヌワースはハールーンに笑顔で応えた、そしてだった。
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