第六章
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「北川さんひょっとしてね」
「ひょっとして?」
「お家でずっと一人でいたのよね」
「一人っ子だからね」
「そのことで嫌な思いとかしてきたの?」
「最初は寂しいと思っていたわ、子供の頃は」
まだ幼かった頃はというのだ。
「お父さんもお母さんも忙しくて」
「それでよね」
「ええ、けれどね」
それでもというのだ。
「そのお陰でお料理出来る様になって」
「それでっていうの」
「そのことは。無神経な言葉かも知れないけれど」
あえてだ、四季は桜に話した。
「それでお料理が上手になったなら」
「いいのね」
「そう思ったけれどどうなのかしら」
「そうかも知れないわね」
四季は桜のその言葉に微笑んだ、それで四季にこう言った。
「それで今もこの肉じゃがをね」
「食べられてるわね」
「そうね、だったら」
それならと言うのだった。
「お家にずっと一人でいたことも」
「よかったかもね」
「他にすることもなかったし」
家で一人でいると、というのだ。
「学校の予習復習に本読むばかりでもね」
「時間が沢山あったから」
「子供の頃からお料理していたけれど。お母さんに断ってから」
そうしてからだったというのだ。
「作ってたけれど」
「それでなのね」
「こんなに上手なのね」
「切るのも味付けも」
「そうなのね」
「ええ、そうなの」
その通りだというのだ。
「私はね。ずっとそのことが嫌だったわ、けれど」
「けれど?」
「けれどっていうと」
「美味しいお料理が作られる様になったら」
それならとだ、桜は笑ってこうも言った。
「一人でいたこともいいかしら」
「ううん、それはね」
四季が桜に応えた。
「一概に言えないけれど」
「それでもなの」
「北川さんのお料理が美味しいことは確かだし」
それでというのだ。
「一人でいたことでそうなったのなら」
「よかったのね」
「北川さんがそう思うなら」
それならというのだ。
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