第一章
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社長の息子
木村壮馬は山梨ではでは葡萄園を中心とした事業をやっている会社の跡取り息子である、細い黒髪を右で分けて耳を隠しておりおりおっとりした感じの奥二重の目と黒く柔らかいカーブを描いた眉を持っており色白で口元は温和な感じである。鼻立ちは整っている。
背は一七〇程で均整の取れたスタイルをしている、性格は非常に温和で優しく気遣いが出来ている。だが。
その彼にだ、高校の友人達は言うのだった。
「木村って全然偉そうじゃないな」
「山梨じゃでかい会社の跡継ぎでしょ」
「それなのに全然偉そうじゃないな」
「誰にも優しいし」
「気遣いもしてくれるし」
「しかも勉強熱心だしね」
「お祖父さんが会長さんで」
その山梨では知らない者はいない企業のだ。
「お父さんが社長さんで」
「叔父さんは県会議員でね」
「もう山梨じゃ知らない人はいないのに」
「何でかね」
「偉そうじゃないよな」
「というか全然逆だから」
「いや、それはね」
どうしてかとだ、壮馬自身が友人達に答えた。
「人間天狗になるとね」
「駄目ってか」
「そう言うのかよ」
「そうれは」
「そうだっていうんだな」
「そうだよ、若しもね」
それこそというのだ。
「一歩間違えたら」
「その時はか」
「会社が傾くっていうのね」
「お前が好き勝手したら」
「その時は」
「そうなんだよね、それいつも言われてるんだよ」
壮馬は友人達にこうも話した。
「お祖父ちゃんからもお父さんからも」
「会社を継ぐならか」
「ちゃんとしろ」
「そう言われるのね」
「若しもだよ」
それこそとだ、壮馬はさらに話した。
「僕が馬鹿なことをしたら」
「会社の評判が落ちるか」
「偉そうにしたりしたら」
その時点でというのだ。
「それで馬鹿だったりしたら」
「社長の馬鹿息子か」
「よく聞くけれどな」
「実際にそんなのだったら」
「どうなるか、か」
「お祖父ちゃんが言うには」
どうかというと。
「馬鹿が出来るのは野党の政治家かプロ野球のコミッショナーか」
「そんなのか」
「まああんな連中だったら馬鹿でも出来るよな」
「プロ野球のコミッショナーって何やるんだ？」
「何が仕事なんだ？」
誰もそれは知らなかった。
「球界再編の時平気で海外旅行行ったんだよな」
「それで何かあると俺にその権限はない、だったんだよな」
「それでも三年座っていたらいいだけか」
「それじゃあ確かに馬鹿でも出来るな」
「禁治産者でも出来るだろ」
何もしなくていいならというのだ。
「それこそな」
「あんなの俺でも出来そうだな」
「私でも出来そうね」
「僕はそういう風になるなって言われてるんだ」
壮馬はまた友人達に
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