第一章
[2]次話
芝刈りと王女の話
イランの古い時代の話である、昔ある国に一人の貧しい芝刈りの者がいた、貧しいが親思いで心優しくそして頭の回転の速い若者であった。名前はハルドゥーンといった。中背で細い目をした浅黒い肌の飄々とした男である。
その芝刈りが王宮の庭の芝を刈っていると末の王女と会い幾度も出会っているうちに親しくなり話もする様になりやがて相思相愛となった、二人のことは王宮でも知られる様になった。それを知った王は妃の一人に苦い顔で言った。
「流石に貧しい芝刈りの妻にするのはな」
「では婿入りではどうでしょうか」
「それもな」
王家に貧しい芝刈りの出の者を入れることはとだ、王は妃に話した。
「どうかと思う」
「では」
「同じムスリムといえどだ」
「芝刈りがあまりに貧しいので」
「幾ら人柄がよく頭が回る者でも」
そうした者なのでどうかと言うばかりだった、それで体よく芝刈りに諦めてもらう為に王は芝刈りにこう言った。
「この国にバーザルジャーンとうう魔術師がいる」
「北の山の方にですね」
「知っておるか」
「はい、何でも随分と気難しい」
「優れた魔術師で不思議な術を多く知っており使えるが」
王はその魔術師のことを知っていると答えた芝刈りにそれならとさらに話した。
「今そなたが言った様に随分と気難しくな」
「それで、ですね」
「自分の全ての術を教えるのに五十年かかると言っている」
「秘伝の書を多く持っていて」
「それを全て教えるにはな」
まさにというのだ。
「それだけかかるという」
「ですから教えを乞おうと思う人は多いですが」
「五十年かかると言われてな」
「誰も引き受けないですね、覚えた魔術も自分の許しを得てから使えと言われ」
「そうだ、その魔術師に弟子入りしてな」
「術を覚えれば」
「そなたと娘の結婚を許そう」
こう芝刈りに話した、王は五十年と聞いてこれは諦めるだろうと思った、だがその予想に反してだった。
芝刈りはそれならと言ってすぐに魔術師のところに行った、王はその芝刈りを見て驚いて妃に言った。
「五十年だ」
「それだけかかると言えばですか」
「それで諦めると思ったが」
それがというのだ。
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