第三章
[8]前話
「ですから」
「それでか」
「はい、断じてです」
「余の後宮にはだな」
「入っておりませぬ」
「ではだ」
それならとだ、カリフはヌワースの処刑は一時止めることにしてあらためて彼を見据えてそのうえで問うた。
「何故あそこまで謡えた」
「カリフのお言葉から歌心を汲み取りました」
だからだというのだ。
「それ故にです」
「あそこまで謡えたのか」
「コーランにもありますな」
ヌワースは笑ってさらに話した。
「詩人は戯言を言い見もせぬことを見た様に言うものと」
「確かにあるな」
「そういうことであります」
「つまり全てはそなたの歌心故か」
「そうなのです」
「その言葉面白い、女奴隷の返事も面白かったが」
カリフはヌワースの言葉を最後まで聞いて述べた。
「そなたの言葉も面白かった」
「そう言って頂けますか」
「だからな」
カリフはヌワースにさらに話した。
「そなたにも銀貨を渡そう」
「有り難き幸せ」
「二万枚だ」
二人の倍を出すというのだ。
「そうしよう」
「それだけ出してくれますか」
「面白い言葉を聞けたからな」
カリフはヌワースに笑って答えた、そうしてだった。
ヌワースはその二万枚の銀貨を持ってそのうえで飲み屋に行きそこで酒と女を楽しんだ。そうしてこんなことを言った。
「優れた詩人の目はわかるのだよ」
「見ていないものでも」
「それでもなのね」
「そして詩に出来るものだ」
こう言ってだ、葡萄の美酒を楽しみ女達を侍らした。これが彼の後宮でありそこで楽しみ続けるのだった。
詩人の目 完
2019・8・12
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