第二章
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「このことで詩を詠んでみるのだ」
「わかりました」
「それでは」
詩人達はすぐに詩を作りにかかった、まずは二人が詩を詠んだがどれも見事なものでカリフも喜んだ、そしてだった。
カリフはヌワースに顔を向けて問うた。
「そなたも出来たな」
「はい」
ヌワースは何処か思わせ振りな笑顔でカリフに応えた。
「既に」
「そうか、ではな」
「これよりそれがしの詩を」
「詠むのだ」
「わかりました」
ヌワースは頷いた、そうしてだった。
彼の詩を詠んだ、それは先の二人のものより水原敷くしかも。
昨夜の全ての経緯を知っている見ているかの様であった、それでだった。
カリフはむっとした顔になり強い声で言った。
「先の二人には銀貨一万枚だ」
「そうされますか」
「うむ、そうするが」
傍の者に応えつつさらに言った。
「ヌワースは別だ」
「といいますと」
「こ奴はこの場で首を切れ」
こう言うのだった、後ろに控えている処刑人マスルールを見つつ。
「即刻な」
「それは何故でしょうか」
「この者の詩は精妙に過ぎる」
怒った顔で言うのだった。
「昨夜の余の後宮でのこと全て見ておったに違いない」
「何と、カリフの後宮を」
「それはなりませぬな」
「ヌワースはカリフの後宮に忍び込んでいましたか」
「それはなりませぬ」
「ではですな」
「その罪で斬首とする」
こう言ってマスルールにやれと言った、そうしてマスルールも動きはじめたがヌワースはカリフに言った。
「ここはお許しを」
「許せることと思うか」
「私が後宮に入ったからですか」
「先程の歌は後宮に入っておられねばだ」
それこそというのだ。
「歌えぬものじゃ」
「カリフの後宮にはどうしては入れるのですか?」
ヌワースはここでカリフに問うた。
「常に外は衛兵が、中は宦官が守っていますが」
「そなたはそこに入ったのであろう」
「いえ、私は隠れるのが下手で」
ヌワースはカリフに自分のことを話した。
「しかもです」
「さらにか」
「はい、剣も楯も何も使えませぬ」
「戦う術は持たぬか」
「その様な者がどうして後宮に入れましょう」
「言われてみれば」
「昨夜私は飲んでいまして」
そうしていたこともだ、ヌワースは話した。
「女とも遊んでいました」
「またそうしていたのか」
「そして今は迎え酒です」
「その証はあるか」
「昨夜行った店の名前と遊んだ女の名が言えまする」
「それが証か」
「カリフにはカリフの、私には私の夜があります」
こうも言うのだった。
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