第二章
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「全くで、会社でもね」
「誰も気付かなかったのね」
「男の人はね、総務課でもね」
「総務課で女の人って私とあんただけで」
「それで気付いたのは」
「私だけよ、いい靴なのに」
それでもだ。
「本当に誰もよ」
「そんなものよね、実際」
「彼氏なんて服とかシャンプーとかも気付くのに」
「靴だけはなのね」
「全く気付かないのよ、香水だって気付くのに」
替えるとすぐにだ。
「本当に靴だけはよ」
「そういうものよね、しかもハイヒールって」
同期の娘は休憩の時のレモンテいーを飲みつつ私に話した、私も彼女と同じレモンティーを飲んでいる。
「歩きにくいしね」
「いざって時早く進みにくいし」
「シューズと違ってね」
「すぐにこけてヒールが折れたり」
「足挫きやすいし」
他の靴に比べるとだ。
「変に高いしね」
「外反母趾とかにもなって」
「いいことないのに」
「それでもね」
私は同期の娘に苦笑いになって述べた。
「そんなのだから」
「注目されないとね」
「少しがっかりするのよね」
「ハイヒールについては」
「どうもね」
「女だけがわかることよね」
「このこともね」
今度はこうした話をした。
「色々とそうしたことってあるけれど」
「それでもね」
「ハイヒールもよね」
「そうしたものよね」
二人で休憩時間に話した、それで仕事が終わるとすぐに彼氏と同棲している部屋に帰った。その途中でスーパーに寄って夕食の食材の買いものをした。
そのうえでご飯を炊いておかずを作っていると彼が帰ってきた、すると彼は玄関から台所で料理をしている私に言ってきた。
「靴替えた?いい靴だね」
「ええ、そうよ」
内心やっと、と思った。けれど気付いてくれた。そのこと自体が嬉しくて。
私は彼にこの夜はサービスしようと内心決めてから台所に手伝いに来てくれた彼に先に着替えてきてと笑顔で言った。朝は気付いてくれなかったけれど今気付いてくれたのならよかった。いいハイヒール履くのには苦労するそれを買った介があったとも思った。
赤いエナメル 完
2019・7・3
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