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或る皇国将校の回想録
第五部〈皇国〉軍の矜持
第七十六話 六芒郭攻略戦(二)
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任務になるだろう。
将兵に来春に向けた憂いのない冬を与える役割は諸君らが担っている!
明日からは鎮定軍総力を挙げた決戦と心がけて臨め!!」



 第2軍団との打ち合わせを終えたユーリアは司令官用天幕でようやく休息をとっていた。
メレンティンも付き添っている、カミンスキィはあまり顔を合わせることがなくなった。彼自身は純粋に戦場の黄金律を信仰している男であった。
 つまりは迂回突破案を支持したのだ。これまで、ユーリアは常の同じく純粋な兵理を信仰していた。その中でも最高指揮官としての気遣いを忘れることはなかった。カミンスキィの高級将校としての振る舞いは少なからず自分が抱いた女から学んでいた面がある。
 カミンスキィはむしろ本領の者達に同情的であった、とりわけ兵と若い将校達に対して。あるいは彼も理不尽に弄ばれる何かへの共感があったのかもしれない。

「殿下、本領の兵達の士気が著しく落ちているようです、それに将校達も」
「私は既に能う限りは注文にこたえると伝えたわ」
 頭を下げるのであれば向こうから、という事だ。無論、過度に干渉するべきではないという意味合いもあるのであろうが。

「素直にそれに応えられれば良いのですが」

「それで兵が死ぬのであれば彼らの責任よ、特にあの男、何と言ったかしらあの参謀長」
「ラスティニアン少将ですか?」

「そう、あの嫌な男。閨閥屋の腰ぎんちゃく気分で兵を扱っているみたい。私を恐れているけど敬ってはいない」
 支配者ではなく敵対派閥の長としてしかみていない、ということだ。帝室の出であり、異民族の住まう邦を統治する副帝の生れであるからこそ、我慢のならない事であった。
 とりわけ〈帝国〉の民として生まれた者であるからこそ、猶更である。
「調べたところ随分と貧しい生まれのようです、出世の為に軍に入った類の男ですな」

「そう、不正の疑いがあれば更迭できるのだけど」
 ユーリアではなく〈帝国〉政府からであれば上手く最大の要因を取り除ける、と思案していた。
「金銭的には潔癖です、というよりも暮らし向きは楽ではないようです。不正をする程、刹那的であれば幾分かはマシでしょう。
貴族の付き合いと病気がちな妻への癒医の為に趣味も持たない有様です」

「臆病で小心、弱いものには強く、強いものには媚びへつらう。その癖、女の一人も養えない、と
まぁいいわ、その程度の存在なら放っておいても問題ないわね、アラノックが制御するでしょう。問題はそれより蛮軍ね、遂に動いたわ」
 ユーリアはそれっきりラスティニアンへの興味を失った。ある種、致し方ない面があった。東方辺境領と〈帝国〉本領は根本的に社会構造が異なっており、彼女は副帝として本領に赴くのは年に数度あれば頻繁といってよい具合であった。
 とり
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