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或る皇国将校の回想録
第五部〈皇国〉軍の矜持
第七十六話 六芒郭攻略戦(二)
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確に統制下におかねばならない。屈服させるか取り込まねばならないのはユーリアも同意している。

 ユーリアは持ち前の豪奢でありながら一種の清涼さを持ち合わせた態度を発揮し、アラノック達に声をかけた。

「本領軍は良くやっている。敵は紛れもなく精強であり、恐るべき火力を有している。
それもまた現実だ」
 ユーリアはふっとアラノックに微笑みかけた。
「”私は”貴官らなればと信じている。〈帝国〉軍元帥として、東方辺境鎮定軍司令官として、貴官らを信ずるよ。引き続き必要な物を能う限り用意させる、よく相談せよ」 
 アラノックもラスティニアンも重々しく頷いた。空気はまったく軽くならない。

「第1軍団より報告いたします」
 カミンスキィは立ち上がっていった。
「コジョウの蛮軍主力についてです。三つの街道に張り付いているすべての部隊の動きが活発になっています。兵力も増大しています。
警戒にあたらねばなりません。龍兵偵察の許可を戴きたい」
 メレンティンは黒い軍服を着た男に視線を向けた。
「ファルケ団長、動かせる龍兵は何騎いる」「116頭です」

 軍幕僚団は渋い顔をしている。アレクサンドロス作戦の切り札となったのは良いが、実際のところ夏場から稼働率が急速に悪化している。飛龍の間で質の悪い病が流行っているのだ。飛龍の管理についての手順すら手探りである。
「3方面に12騎‥‥36騎を回して」
ラスティニアンが目を剥いたのを見てカミンスキィは低い声で尋ねた。
「殿下、龍爆の効果が落ちますが要塞の方については――」
「私に考えがある、攻城戦については問題ない」
 ファルケ大佐が手を挙げた
「殿下、一つよろしいでしょうか」
「許す」
「夏季の運用で予想以上に損耗が出ております、無理をさせると飛龍の調子が崩れてしまいます。
正直、申し上げて蛮軍よりも冬が恐ろしい、というのが龍兵管理を行う人間としての意見です」
 ユーリアはわかっている、と手を振った。こうした直接的な発言の方がユーリアの好みである。
「明日だ、明日が最後の龍爆になると思え」
 龍兵の扱いは予想以上に難しい、気候の変化に飛龍は弱い、という事を引っこ抜いた際の予備知識としては知っていたが追撃戦や六芒郭攻略戦と続く龍爆の多用により想定以上の悪影響が出ている。
 銃弾ではなく高温多湿と〈皇国〉内務省が主導する疎開政策が原因であった。
兵站の負担は食糧だけではなく医薬品にまで響いている。

「第21師団はクラハラとの街道を封鎖しなさい。第5騎兵師団にコウツまで哨戒網を強化するよう。第15師団からは旅団を増強してユミノ南部でアシカワ周辺の防衛線を強化。
雨季は間もなく訪れる、この数日以内に動く可能性が高い。
第1軍団、第2軍団ともにこの戦役(キャンペーン)最後の
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