三十一 接触
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近付く人物の姿を認めて、ナルトは口許に微かな微笑を湛えた。
直後、掻き消える。
後には、術者無き一輪の蓮の花だけが静かに咲き誇っていた。
「ナル…!しっかりしろ!!」
皮膚が焼け爛れたナルを、シカマルは必死に呼びかけていた。
ナルの身を案じつつも、ヤマトは周囲を警戒し、注意深く辺りを見渡す。
己がやったのではない木遁の術。
【木遁・花樹界降臨】という高度レベルの術を誰が発動したのか。
更に、あの九尾化したナルの九尾チャクラを容易に抑え込めることが出来た事に関しても謎だ。
抵抗ひとつなく、やけに簡単に【火影式耳順術・廓庵入?垂手】で封印できたのも、奇妙な点である。
(誰かが介入している…いったい、誰が…)
謎に、思案顔を浮かべたヤマトは、ナルに近付く気配を感じて、ハッと身構える。
同時に、同じく気づいたシカマルが印を結んだ。
「ナルに近付くな…!」
「早とちりだよ。何もしやしないさ」
途中から姿を見せなくなっていたカブト。
ナルに手を伸ばそうとしている彼の動きを【影真似の術】で動けなくしたシカマルは、カブトの動向を鋭い眼光で睨みつける。
その視線に苦笑を返したカブトは、「それどころか、その逆さ」とナルの焼け爛れた皮膚を見下ろした。
「見たところ、君達は医療忍者じゃないだろう?彼女の怪我を治してやろうと言っているんだ」
「……どういうつもりだ?」
シカマルと同じく、警戒心を露わにしたヤマトがいつでも木遁の術を発動できるように身構えて問いかける。
ヤマトの質問に、カブトはシカマルの影で動けないまま、手にチャクラを纏わせた。
「こういうことさ」
倒れ伏すナルの身体に、カブトの淡いチャクラが伸ばされる。
じわじわと、焼け爛れた皮膚が治ってゆくその様を目の当たりにして、シカマルは眼を瞬かせた。
「君の大事な子を治療するんだから、術を解除してくれないかな?」
「……妙な動きをするなよ」
「わかっているさ」
シカマルの忠告に応じたのを確認し、ヤマトが目配せする。
ヤマトの視線を受け、シカマルは渋々【影真似の術】を解除した。
確かに、医療忍者がいない今、唯一医療忍術が使えるカブトにナルを診てもらうのは願ってもない話だ。
だが治療中、何をするかわかったものじゃない敵の一挙一動を、シカマルは微塵も見逃さぬように眼を凝らして見つめた。
「どうやら亡き者とまではいかなかったけれど、話を聞く限り、あのサソリと良い勝負をしたんだろう?」
眼鏡の奥の瞳を光らせて、カブトは治療をする手を止めることなく、シカマルとヤマトに視線を投げる。
沈黙を肯定と受け取って、カブトは口角を軽く吊り上げた。
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