第五十六話 卒業式の前その十三
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「それでもね」
「同じ大教会だからね」
「これからも会うわね」
「ええ、ただあの子結構あつかましいから」
「そうかしら」
「そうじゃない、うちに来た時だって」
私はお母さんにその時のことから言いました。
「そうだったでしょ」
「別にそうは思わなかったわよ」
「そうなの?」
「むしろ謙虚な子じゃない」
「そう?」
「礼儀正しかったし」
「そうは思わなかったけれど」
私にしてみると正反対の感想でした。
「最初から私に小さいとか言うし」
「千里ってずっと小柄なこと気にするわね」
「するわよ」
しないではいられないです。
「あと五センチ欲しいって思ってるのに」
「背が高くならないからよね」
「だから気にしているの。けれどね」
高校の三年間も一五〇センチのままでした。
「結局ね」
「今もよね」
「背が大きくならなくて」
「それは仕方ないわよ」
「遺伝だから?」
見ればお母さんも小さいです、というかお母さんの姉妹、私から見て叔母さん達も母方のお祖母ちゃんも従姉妹も皆小柄です。
それでです、私はお母さんに西の礼拝堂の入り口の近くで言いました。
「だからっていうのね」
「そうよ、結局遺伝はね」
「仕方ないことなのね」
「牛乳とか飲んだら変わる場合もあるけれど」
「場合もある、なのね」
「そう、そうならない場合もあって」
それでというのです。
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