ボス攻略(1)
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
五メートルほどの体躯、手には骨を模した巨大な両手昆、目にはらんらんと紫色の炎を灯し、頭頂部から赤い一本角を持つ、巨大人型骸骨、第二十一層フロアボス《Wendigo》。
この――ウェンディゴというフロアボスの名前に、俺はおろかアスナも、クラインも覚えがなかった。七十五体のフロアボス名称+フィールドボス名称すべてを即座に筆記しろ、などと言われてもたぶん何体か取りこぼすだろうが、あのアスナも思い出せない以上、旧アインクラッドにウェンディゴという名前のフロアボスは存在しなかったと考えるのが自然だろう。
フロアボス名称としては思い出せなかったが、その名を持つモンスターは他のRPGタイトルではメジャーなので、もしかしたらと思いリーファに邪心級モンスターがうろつくヨツンヘイムに聞いてみたところ《Ithagua》――イタカというMob邪神級モンスターが存在するという。
イタカ、という名前にはまさしく聞き覚えがある。それこそ二十一層のフロアボスの名前だったはずだ。ようするに俺の目の前にいるネームドボスウェンディゴは、ALOに同名のモンスターが存在していたせいで変名を余儀なくされた、一種のかわいそうモンスターであるらしい。まあ、存在そのものが別種になっているフロアボスも存在するので、それよりはいくらかマシなのかもしれないが。
ALOにアインクラッドをつっこんだ事により、偶発的に発生した変名の悲劇にマナ・ポーション一個分くらいの同情を抱きながら、俺は容赦なくスケルトン型ボスモンスター、ウェンディゴの骨しかない脚に《バーチカル・アーク》をたたきつける。上下のコンビネーションで硬直していても使用可能な体術スキルの正拳突きをコンボで叩きつけると、激突部から黄色のエフェクトがぱっ、と咲いて消えていく。
ナックル装備もないので与えられるダメージはほんのわずかだが、そのほんのわずかなダメージが足りず、とどめを刺せなかったなんて思いはしたくない。されどもう一撃ソードスキルをお見舞いすると、今度はヘイトの加算につながってしまう。盾役がタゲとりをがんばっているおかげである程度安心してソードスキルをたたき込めてはいるのだが、ダメージディーラーのヘイト加算だけはどうしようもない。
まわりにいるのが気の知れた仲間だけであるなら「ヘイト増加ばっちこい! ステップ&パリィでノーダメ上等だぜ!」なのだが、こういう集団戦でそれをやらかすと戦線の崩壊につながってしまう。
俺は自らも攻撃に加わりつつ、アスナに向かって手振りを行い戦線から下がることを伝えて、思い切りバックダッシュした。ボスに対して背を向けて逃げる、という愚は犯さない。
下がる俺とは逆に、ヘイトの減少がはじまった何人かが俺の下がるのと同時に走り出した。ボスが時折発動させる、両手昆広範囲攻撃の
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ