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ソードアート・オンライン クリスマス・ウェイ
攻略準備(4)
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た。
 
「パパ……いまママ、笑って……」
「ああ。しっかり見たよ」

 俺とユイは確かに見た。笑いながらボスの待つ薄暗い部屋に踏み出す、アスナの姿を。
 頭の上に座るユイが小さい体をさらに小さくふるわせている。

「ママ……すごいです。パパはどう思います?」
「うん。かっこいいと思う」
「……パパ。それは女性のほめ言葉としてはちょっと微妙かも、ですね」
「……」

 一歳になったばかりの愛娘は、どうやらすでに女心というものを理解しているらしい。
 見習いたい。ものすごく。
 時々、その「女心」が分からなくて女性陣に叱られる身の上としては、是非に。

「ママはすごくて、強くて……ですけど、最近すこし……ほんの少し、元気ないです」
「……ユイ。それアスナに言うのはちょっと待ってくれ。少なくとも、アスナの方から俺たち相談があるまでさ」
「はい……」

 頭の上で頷く気配がした。俺は片手を頭の上にあげて小指を立てる。
 ユイの小さな手のひらが両手で小指をにぎりしめるのを感じた。

 学校帰りの別れ際やログアウトの直前に、アスナの顔に影がさすようになったのは、ユイが言うとおり最近のことだ。
 気が付いているのは、俺とユイ、それにリズくらいなもので、その時には本当に心配した。リズと二人でうんうんうなり、結局アスナから話をしてくるのを待つことにした。

 アスナは、強い。俺なんかよりも、もっと、ずっと。その気持ちはSAOの頃から変わらない。

 つい最近もアスナの強さに甘えて、弱さを吐き出してしまった。
 町中で降ってきた雪と聞こえてきた赤鼻のトナカイにおもわず足を止めてしまった俺を明日奈は心配そうにのぞきこんできた。
 そのあと、茫然自失としている俺を近くのベンチに座らせ、俺の腕を抱き腕の震えが収まるまでずっと一緒にいてくれた。
 そのとき雪と歌に感じていたすべてを白状してしまったのは、きっと俺の弱さだ。

 数値的なステータスでははかりきれない、魂の強靱さをアスナは持っているし、俺はそれを信じて疑わない。

 だが、ずっと強い人間なんていないはずだ。
 仮想世界が認識できる、唯一の場所であったのはもう一年以上前のことだ。俺たちはおのおの折り合いをつけながら、現実世界と仮想世界のふたつをまったく別の役割をもった「人物」として過ごしている。

 アスナが抱えている影は、現実に根ざす問題で、その根底にSAOで過ごした年月が関係していることを俺たちはなんとなく察している。
 もちろん、力になりたいとは常々おもっているが、無理やり彼女の悩みを聞きだすことが、本当の意味でアスナがためになるかがわからない。
 リズが過保護なまでにアスナを心配しているのは、俺と同じでどこまで踏み込んでいいのかわからな
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