第六章
[8]前話
「全く違うな」
「まあ子供の頃のことは」
「あまり覚えていませんけれど」
「変わったと言われますと」
「実感がありますわ」
「そうだな、じゃあ今の柔道着が駄目になったらな」
岳は二人から柔道着を受け取った、しっかりと上下ありしかも帯まであった。有段者の黒帯である。
「その時はな」
「この柔道着を着ますのね」
「そうされますのね」
「そうさせてもらう、そしてだ」
岳は柔道着を手にさらに言った。
「後はだ」
「後は?」
「後はといいますと」
「お前等もな」
岳は二人に笑って話した。
「将来相手見付けろよ」
「旦那様ですか」
「わたくし達の」
「そうしろよ」
こう二人に言うのだった。
「いいな」
「今は交際している方もおられないので」
「想像も出来ませんが」
「何時かは、ですか」
「わたくし達もですか」
「そうしろよ、俺もな」
岳は二人に自分のことも話した。
「結婚したんだからな」
「わたくし達もというのですね」
「やがては」
「そうしろよ、しかしな」
ここでだ、岳は十年前の二人の言葉を口にしかけた、だが。
やっぱり言わないでおこうと止めてまた二人に言った。
「何でもないよ」
「そうですの」
「何もありませんの」
「ああ、じゃあ二人が結婚する時を楽しみにしてるな」
この言葉と共にまたビールを飲んだ、そのビールの味は実に気持ちよくそれでまた一口飲んだ。結婚と十年前のことを肴にして。
子供の言うこと 完
2019・12・27
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