その33
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ない人間の、忌憚無い本音の言葉だからこそ尚更だ。
しかし、なんの力も持たない相手だからこそ、そう思ってしまうのは仕方の無い事なのかもしれない。
だが、どちらにせよ、うちはの血を引くサスケが気にする類いの物ではない。
逃げ出した男の背中を、侮蔑と共に見送っていた時だった。
ぞくりとした肌が泡立つ感覚を覚えて、サスケは思わず振り向いた。
そこには、サスケですら怖気が立つような、非常に冷たい凍てついた眼差しと表情で、逃げ出した男の背中を見つめるナルトが居た。
「化け物、ね。誰に向かって言ったのか、判ってるのかな、あいつ」
氷のような冷たさを感じさせる硝子のような青い瞳で、感情を感じさせない平坦な声を小さく漏らすナルトは、サスケが良く知るナルトの形をした別の何かのようだった。
サスケへの罵倒に、自分の事以上に感情を剥き出しにするのは、いつものナルトらしいけれども。
この辺りに伝わる古典模様を編み込まれた大振りな組紐で、頭の高い位置で二つに結い上げられた、長く、赤いナルトの髪が、同じく赤い夕暮れ時の潮風に舞っている。
知っている相手の、見慣れない服装と髪型が、目の前に居るナルトは、実はサスケの知らない別人なのではないか、と、サスケに思わせた。
目の前の存在が、うずまきナルトなのは承知しているけれど。
でも、今、ナルトの髪を飾っている黒に近い濃い茶を基調とした組紐は、ナルトの髪には似合わないとサスケは思った。
ナルトのこの赤い髪に似合うのは、もっと華やかなはっきりした色だろう。
金や、それに、白に近い色なんかも似合うかもしれない。
でも、ナルトが今身に付けている濃い茶色では、ナルト自身の髪色に埋もれてしまう。
それは少し勿体ない。
淡い桃色と薄紅色を基調とした、この辺りの可愛らしい民族衣装は、わりとナルトに似合っているのに。
茶色も、合わない訳では、無いようだけど。
それでもより合うのは、多分、もっと違う色だ。
いっそ、なんの飾り気もない艶のある漆黒でもいい。
その方がきっと、ナルトの髪には映える。
母が手にしていた朱塗りの櫛ではなく、それを納めていた化粧箱のような、艶のある黒塗りの、螺鈿細工の蒔絵が散るような。
風に舞うナルトの髪を眺めながら、思わずそんな事を考えている自分に気付き、サスケははっと我に返った。
居心地悪く、サスケの胸が騒ぐ。
「お前、その髪どうしたんだ」
「これ?今日の朝、サクラが結ってくれたの。今日、僕、休日だからって。この格好は、この頭を見たツナミさんだけど。結構動きやすいから、これ僕気に入ったかも。女の子の格好は、動き難いのが判ったから、もうしなくて良いかなって思うけどね」
「…へえ」
居心地の悪さを誤魔化すように発した、誉め言葉とは逆のサスケの質問に、いつものように不敵に笑いながら答えるナ
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