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どちらかにしなさい
第一章

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               どちらかにしなさい
 冴羽幸平はこの時母の沙織に厳しい顔で言われていた。
「どっちかにしなさい」
「プリンかコーヒーゼリーか?」
「そう、今日のおやつは」
 母は我が子に厳しい顔で告げる。
「どちらかにしなさい」
「それじゃあもう一方は」
「明日なんだ」
「そう、今日はどちらかにして」
 そしてというのだ。
「残った方はね」
「明日食べろっていうんだ」
「そうよ、いいわね」
「どっちかにしろって」
 どうかとだ、幸平は母に困った顔で返した。
「言われても」
「選べないっていうの?」
「そんなこと言ったら」
 それこそというのだ。
「僕も困るよ」
「食べたら駄目って言ってないでしょ」
 沙織は腕を組んで我が子に対して事実を告げた。
「そうはね」
「どっちかをなんだ」
「食べていいのよ」
 このことを言うのだった。
「好きな方をね」
「それで残った方はなんだ」
「そう、明日よ」
 明日のおやつの時間に食べろというのだ。
「いいわね」
「じゃあね」
 そう言われてだ、幸平は。
 冷蔵庫を開いてそこからプリンとコーヒーゼリーを出した、そしてだった。
 自分の前に置いた、それぞれ一個ずつある。もっと言えばどちらも彼の大好物である。
 だからこそどちらを先に食べるかということで悩むのだ、それで彼は母に対してあらためて話した。
「どちらかって言われると」
「お母さんまた言うわよ、今日食べるのはどっちかで」
「明日はだね」
「今日食べなかった方よ」
 つまり残った方だというのだ。
「あんたは二日でどっちも食べられるの」
「そうなんだ」
「他の誰も食べないわよ」
「お母さん食べないの」
「絶対に食べないわ」
「お父さんも食べないの」
「お父さんプリンもコーヒーゼリーも食べないの」
 甘いものは嫌いではないがどちらも手を付けようとしない、聞いてみるとどちらも好きではないとのことだ。
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