第一部
隔たり
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【黒鋼流練氣術・氣死快清】によって《立華紫闇/たちばなしあん》は瀕死の状態から復帰するも、既に《江神春斗》の姿は無かった。
「【夏期龍帝祭】で優勝すれば、また相手をするって言ってたよ。江神は大会の期間中、精神と感覚を研ぎ澄ませ備えておくらしい」
《黒鋼焔》の言葉に紫闇が首を捻る。
「何に備えるんだ?」
「そりゃあ優勝者に挑む為でしょ」
《的場聖持》が何を今更とばかりに答えた。
「派手に負けたから実感が湧かないのかもしれないけど、俺等が知る限り紫闇は出場する生徒の中でも優勝する第一候補の筆頭だからな。春斗も次を楽しみにしてるのさ。一月半の修業で今の強さになったわけだし」
そうは言っても惨敗。
あちらが期待してくれているのは嬉しいが春斗は無傷で紫闇は死ぬ寸前だった。
「悔しいけどそこまで悲愴感は無いな」
《佐々木青獅》を相手に逃げていたことを思えば成長しているのは明白。
「焔。修業を一段階きつくしてほしい」
「江神に勝つ為かな?」
今回は負けで良い。
自身の変化を実感したから。
価値の有る敗北と言えよう。
でも次は負けたくないと思った。
「二度目の敗北は価値有るものにならないんじゃないかって思うんだ。結局は今日と同じだし。もしそうなったらレイアさんや焔と過ごした時間が水の泡になる」
だから勝ちたい。
「酷だけど厳しいよ? 江神春斗は【魔術師】の【異能】を全く使わず、ただの武器としての【魔晄外装】と【魔晄】の操作だけで紫闇をこの有り様にまで追い込んだわけだからね」
「……そんなに隔たりが有るのか? 今の俺と江神の間に有る実力差は……」
焔の忠告に紫闇は眉間に皺を寄せた。
「はっきり言わせてもらうけど、春斗は紫闇が今の10倍強くなったとしても異能と魔晄外装を使わずに魔晄操作と体術のみで殺せる」
そこまでかと紫闇は驚く。
「春斗の修業に何年も付き合ってる身としては魔術師としての力だけに頼って戦ってる内はまだ紫闇に勝ち目が有るぞ。『それ以外』も出してきたら何年かかることやら」
エンドは唸る。
「今日の彼でさえ紫闇が無策の真っ向勝負を挑むなら最低でも五年は要る」
皆の意見に紫闇は嘘だと言ってほしかった。
「もしあたしと同じで魔術師以外の力も持つなら紫闇が修業開始から今日までの一月半と同じペースで成長できても10年以上かかる。それほどに江神は底が知れない」
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