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ソードアート・オンライン クリスマス・ウェイ
攻略準備(1)
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あって、みごとに種族も武器もバラバラな攻略メンバーが、畳一条ほどの大型スクリーンとその横に立つ今回のボス攻略担当責任者、アスナを交互に見る。
 白の短衣とスカートを装備したアスナは、四十名近い人垣に囲まれながらも物怖じせず、凛とした声をホールに響かせていた。
 アスナは今、先遣隊が(この場合は俺たちが担当した)持ち帰った情報を元にボスの攻略法をメンバーに解説している。
 内容は盾役との交代のタイミング、ボスの攻撃パターンなど多岐に渡り、集まった一人一人に「自分がやるべきこと」を浸透させていく。
 熱と迫力に満ちたアスナの講義を、集まった即席の攻略パーティは輪を作って聞き入っている。俺は嘆息しながら感想を披露した。

「まあSAOの攻略担当責任者様なら、あれくらいは朝飯前じゃ――」
「それ、まさか本気で思っているわけじゃないでしょうね?」

 俺が言いきるか否か、リズが素早く返答した。アスナを見つめる瞳には、わずかに不安の色が浮かんでいる。リズの肩にそっと手をおいた。

「……攻略会議や指揮はアスナにとっていい思い出ばかりじゃないよ。ソロをやってた俺には分からない苦労があったはずさ」

――その苦労のなかには攻略組きっての不良ソロプレイヤーへの物理的説得とかもあったはずだが、もちろん口には出さない。

 クラインを含めた何人かの命の重さから逃げ出した俺と違い、アスナはKoBの副団長として、重責をずっと担い続けていた。第七十五層まで、ずっと。
 あの細い肩にパーティメンバー全員の命をのせて、自身もまた危険なボス攻略に挑んでいたのだ。
 リズが半歩ほど俺の方に移動してわき腹を肘で小突いてきた。

「わかってるならしっかりフォローしなさいよね。あの子、最近ちょっと気になるから……」

 アスナに対してやや過保護気味のリズに苦笑しつつ、俺は大腕をふるってボスの戦闘パターンを解説するアスナに再び目をやった。
 少なくとも今は、無理している様子はない。
 青い髪を揺らし、瞳に強い意志の輝きを宿らせるアスナの姿は、恋人であるとか、知り合いであるとか、そういう関係性を無視しても、びっくりするほど魅力的だった。アスナのまわりだけ温度と華やかさが違う。
 おそらくパーティを組んでいる何人かも、きっとそんな感情をもってアスナの講義を聞いているのだろう。にやけ面のやつまでいる。

――それがなんだか、無性に気に食わない。

 胸元が奇妙にざわいた。たぶん、ユイあたりはこれが嫉妬の感情だと感じ取るだろう。醜い所有欲かもしれないが、どうにも動き出した感情を止められない。

「……そんな顔してるくらいなら、大丈夫そうね。あたしたちをホームから追っ払った後、ちゃーんと、いちゃいちゃするように」

 リズが言った。気がつくとリズが
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