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寂しい夜に、あなたの温度

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 夢を見た気がする。内容は覚えていないけれど、とにかく眠たくて仕方がない。もう一眠りする時間は十分にあるし、現に瞼は今にもくっつきそうだ。けれど、"寝てはいけない"という気持ちだけで眠気と闘っていた。

「難儀なこった……もう、お前さんを追い立てるようなものはない。眠っちまえ」

 優しさに似た情を含んだ男の声と手が、寝返りを打つことすら億劫な身体をそっと宥めてくれた。大丈夫、頑張れるよ。まだ平気。

「――、」
「……起きてからでいい。オレの目を見て、イイ声で呼んでくれよ?」

 髪を梳いてくれる指先が心地よくて、このまま睡魔に身を委ねてしまいたい。けれどまだ、もう少しだけ撫でられている感覚を味わいたくもある。

「待っててやる、だから休め」

 いいのかな、怒られない? そんな迷いも、まるで許すかのような口付けが与えられ、ほどけてゆく。重なっていた彼の手をしっかりと握り締めれば、きっと幸せな夢が見られるはずで、そして何より、起きることを恐がらなくていいのだ。
 ああそうか、わたしは――。ありがとう、約束通り目が覚めたら貴方の名前を、きっと呼ぶから。






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