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戦国異伝供書
第六十八話 上洛に向けてその十一

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「武田殿、長尾殿とはな」
「戦ってはなりませぬか」
「両家は恐ろしく強い」
「長尾殿は確か」
「うむ、軍神とさえ呼ばれてな」
「毘沙門天を信仰され」
「まともに戦って勝てる御仁ではない」
 輝虎、彼はというのだ。
「だからな」
「あの御仁とは」
「そして武田殿ともじゃ」
「戦うべきではないですか」
「若し戦えば」
 どうなるかもだ、雪斎は元康に話した。
「拙僧は守らねばな」
「戦えませぬか」
「陣を固め城に籠り」
 その様にしてというのだ。
「戦いを避けねば」
「敗れますか」
「お二方はな」
 晴信そして輝虎はというのだ。
「到底な」
「だからですか」
「お主もな」
「戦わぬことですか」
「出来るだけな、しかし戦わねばならぬ時もある」
 雪斎はこうした時があることもわかっていた、それで今言うのだ。
「だからな」
「その時は、ですか」
「死を覚悟せよ」
「そのうえで戦えと」
「そして敗れてもな」
 その時もというのだ。
「逃げよ」
「馬や水練で」
「そしてじゃ」
「生きることですな」
「左様、お主でも勝てぬ」
 晴信そして輝虎にはというのだ。
「そこはわかっておれ、とはいっても」
「戦わねばならぬ時もですな」
「あるやも知れぬ」
 その場合もというのだ。
「その時のことも言うのじゃ」
「死を覚悟して戦い」
「そしてじゃ」
「生きるのですな」
「そうせよ、そしてその負けからな」
 さらにというのだ。
「学び糧とせよ」
「敗れたことを」
「左様、戦にはどうしても勝ち負けがあり」
「勝てばよしで」
「負けてもな」
「そこから学ぶことですか」
「命があればどうにも出来るからな」
 それだけにというのだ。
「負けてもじゃ」
「生きることですか」
「何としてもな、その為にお主に馬術と水練を学ばせ」
 そしてというのだ。
「熱心に励ませておる」
「剣術や弓術よりも」
「そうしておるのじゃ」
「そういうことですな」
「左様、ではな」
「これからも」
「生きていくのじゃ、お主達も」
 雪斎は酒井達元康の家臣達にも顔を向け穏やかな声で頼む様に告げた。
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