第六十八話 上洛に向けてその八
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「確かに」
「しかしあの家は違う」
「主家を追い出して」
「そうして自身が主となっておる」
「幕府に断りもなく」
「無論幕府が認める筈もない」
斎藤家の主家追い出し、そして国の乗っ取りをというのだ。
「まして当家は将軍の位を継ぐことも出来る」
「足利家の分家であるので」
このことは室町幕府が出来た時からのことだ、今川家と三河を治めていたその吉良家は足利家の分家であるので将軍の位を継ぐことが出来るのだ。
「それではですな」
「幕府の権威があってこそじゃ」
「今川家もありますな」
「そういうことじゃ」
まさにというのだ。
「だからじゃ」
「斎藤家は尚更ですな」
「むしろ守護代の家である織田家よりもじゃ」
「許せぬ相手ですか」
「殿は織田家は降して召し抱えてもよいとお考えじゃが」
それでもというのだ。
「斎藤家に対してはな」
「許せぬとお考えですか」
「左様じゃ、命を奪わずとも」
「美濃からは追い出す」
「そうお考えであるからな」
「斎藤家とはですか」
「敵の敵は味方であるが」
この考えでは斎藤家は今川家の味方であるがというのだ。
「それがじゃ」
「斎藤家は当家にとって今川家以上の敵であるので」
「手を結ぶことはない」
決して、という言葉だった。
「だからな」
「織田家の後は斎藤家であり」
「その対立は利用する」
それのみという言葉だった。
「それだけじゃ」
「左様ですか」
「そもそも親殺しを信じられるか」
このこともだ、雪斎は話した。斎藤家の今の主である斎藤義龍のことだ。
「果たして」
「それは」
「むしろ父君よりもじゃな」
「信じられませぬな」
「自分の父を殺したなら」
「誰でもですな」
「殺す、人は超えてならぬ一線を超えると」
そうしてしまえばというのだ。
「もうどの様なこともする」
「悪事も」
「そうなるからな」
だからだというのだ。
「拙僧も殿にな」
「斎藤家と手を結ぶことはですな」
「言わなかった」
義元に対してというのだ。
「一切な」
「信じられぬ相手とはですか」
「手を結べぬからな」
「だからですか」
「武田殿は親不孝と言われるが」
雪斎は今度は晴信の話をした。
「しかし父君を殺してはおられぬな」
「追放されただけで」
「それならばじゃ」
まだ、と言うのだった。
「よいのじゃ」
「超えてはならぬものを超えていない」
「そうなのじゃ」
「そこですか」
「斎藤殿は超えた」
元康にこのことを話した。
「だからな」
「あの御仁は問題で」
「それでじゃ」
だからこそというのだ。
「とても手を結べぬ」
「そういうことですか」
「そして今よりその武田殿とな」
「長尾殿ですな」
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