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帰還(1)
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すからしっかりついてこいよ!」

 俺はリズの手をむんずとつかむ。
 うわっ、驚く声が聞こえたがかまわずにそのまま走り出した。
 雪が生む、足裏の摩擦低下のせいで、何時だったかリーファを引っ張り回したときのようにはうまく行かない。
 リズを巻き込んでの転倒はさけたかったので、全力より少しペースを落としてアスナを追う。
 リズは引きずられながらも、自分の脚もつかってついてきてくれた。
 そこでふと思い出した。

「あれ? リズはホームの場所知ってたよな?」
「あ、あんたたち、最後まであたしを新居に呼ばなかったでしょうが!」
「そうだっけ?」
「ちょ、ちょっと! こっちは、どんだけやきもきしたと思ってんの! なんで呼んでくれないのとか思ってたのに! わ、忘れてただけなの――!?」

 隣を走りながら、うきーと声をあげるリズ。
 そういえば結婚の挨拶はしたものの、新居に招いたことはなかったような。
 正直、そこまで恨まれているとは知らなかった。
――そうだ思い出した。新婚生活が落ち着いてから知り合いを案内しようと決めていて、結局生活が、落ち着く前にSAOをクリアしてしまった。
 それにまさか帰ってくるまで一年もかかってしまうなんて、あの時は俺もアスナも、夢にも思っていなかった。

「ま、まあ道は俺が知ってるし、ゆっくりついてきたっていいぜ! あとで迎えにくるからさ――」
「じゃあなんで、あんたは走ってんの?」
「それは、その――」

 リズへの答えは、すぐには言葉にならなかった。すぐさま伝えるには語彙が足りない。
 それきり俺たちは無言で道を走った。雪を踏みしだく音が響く。
 顔に当たる空気は氷の刃のようだ。
 そんな寒さなど気にもしていないだろう。月明かりに輝く大粒の雪が舞い降る中、青い髪と白の衣装をはためかせて先をいく――アスナの姿はどこまでも透明で。

 雪の紗幕の向こうで青い髪が踊っていた。
 アスナが針葉樹の並びで作られた十字路を曲がった。
 あっ、と声を出すリズに目配せしながらアスナが曲がった道に続く。曲がった先はほぼ一本道だ。見失いようがない。

 そして――唐突に、眼前にログキャビンが現れた。

 雪のカーテンに視界を封じられ、キャビン自体が記憶に残っている姿から様変わりし、風景に溶け込んでいたので気づくのが遅れた。

 俺が脚を止め、慣性で前のめりになるリズを片手で支えながら、「ホーム」を見つめた。
 
「あった……」

 俺とアスナがSAOを去ってからすでに一年と一月が経過していた。
 にもかかわらず俺の記憶にある「ホーム」と、目の前の「ホーム」は、外見を雪で白く染めつつも、鮮やかに合致した。

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