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曇天に哭く修羅
第一部
人か、鬼か
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「はあぁ〜痛ってぇなぁー。痛ぇ痛ぇ痛ぇ。江神〜、確かにお前の攻撃は凄ぇしパワーもスピードも有って痛ぇんだけどよぉ。体に響く割に心には響かねぇんだよなぁ〜」


彼は迷い無く歩を進める。

そして春斗の斬撃範囲に入った。

半円を描く刃が折れた鎖骨の有る部位を打つも紫闇は何も感じていないかのよう。


「だからさぁ。響かない(・・・・)んだって」


今の紫闇に痛いだけの攻撃は通じない。

魔晄防壁を越えるだけの威力が有ろうと。


「前に焔が言ってたのを思い出したよ。江神はさ。『人』なんだろ? 俺等とは違うんだ。だから攻撃に明確な殺気が(こも)らない」


にいっと笑う紫闇に春斗は困り顔。


「その通りだ。俺は『鬼』の域へと到っていない。歴代の[魅那風流剣術]を継いだ者は黒鋼と同じく皆一様に鬼だったのにな」

「言っとくがな江神。俺は馬鹿にしてるんじゃないぜ。技量はお前が遥かに上なわけだしな。ただ一線を越えてほしいだけさ。でなきゃあ折角の勝負が味気ない」


再び紫闇が前に出る。


「俺で覚えろ。一線越える感覚を」


もっと間合いに踏み込む。

春斗の袈裟懸けを右腕に装備された籠手のような【魔晄外装】で受けて蹴りを放つ。

春斗は一歩退いて回避。

それを追う紫闇は左拳が金に輝く。

禍孔雀が振るわれた。

しかし先読みしていた春斗は顔に迫る拳に対して首を捻ることで回しカウンターの一閃。

が、紫闇は喰らいながら前に出る。

右拳が繰り出された。


(馬鹿の一つ覚えも使い(みち)が有るが)

「ここでは悪手だったな『鬼の子』」


春斗が近付く右腕を鞘で弾く。

斬る、斬る、斬る。

そこからは一方的な展開。

攻撃を(かわ)しながら斬り、先手を取って斬り、攻撃を攻撃で押し切って斬る。

面白いように紫闇へ当たった。

先に春斗が出した魅那風流の[飛車斬り]という乱撃技に劣らぬそれに紫闇の体はあちこちから血が噴き上がっていく。


「立華紫闇。悪いが俺は『鬼』になるつもりは毛頭ないのだ。鬼にならずとも『人』のまま強く在れることを証明してくれた人が居る。俺はあのようになりたい。故に今のお前に負けてやるわけにはいかん」

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