ターン19 幕間の妖狐
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ルポリス内部でもその事実は公然の秘密として認識されていた。
「それにアンタの開発した新型、まだ世界のどこでもまともに実用化されてないだろ?あれが出回りさえすれば、認めたくはないがアタシらはもう総崩れだ。デュエルポリスは『BV』を無効化できる、それが一番のアドバンテージだったんだからな」
「ええ。デュエルポリスの壊滅だけなら、本来我々がその気になりさえすれば簡単な仕事でしょう。もっとも、そこで話が終わらないからこそどこの組織も下手に動けないわけですが。あくまでも世界への復讐は、我々にとって通過点。重要なのは、その後の世界の覇権。私としては正直、どうでもいいんですけどね。そのせいで貴女方デュエルポリスがいつまでものさばっていては、それこそ本末転倒だとも思うのですが……おっと失礼、話が逸れましたね」
いつの間にか脇道に向かっていた話を軌道修正し、少し間を空けたのちまた口を開く。
「簡潔に話しましょう。我々は今回、あの新型『BV』の技術の一部と引き換えに資金提供を同業の方に打診しました。なにせ、鼓千輪。貴女がフランスでご活躍されたフルール・ド・ラバンク摘発事件は、少なからず我々の資金繰りに影響を及ぼしていましたからね」
「それは何よりだ」
確かな殺気のこもった視線を受け止めてなお鼓は眉一つ動かさず、平然と短く返す。巴もその反応は予期していたのかそれ以上嫌味を積み重ねるような真似はせず、すぐに話を進めた。
「どこまでこちらの手札を明かさずに済むか、その情報に対しいくら引き出せるか……こちらがそういった作業を任せていたのが、今回の犠牲者となった朝顔です。私が直接交渉の窓口に立ってもよかったのですが、私よりも彼の方が性格的に適任である点、万一のことがあった際に技術的なことには疎い彼ならば口を割る心配がないという点を重く見た形になりますね。少々用心しすぎかとも思ったのですが、まさか本当にこんな思い切ったことをしてくるとは」
なんてことないような口ぶりだが、その言葉や表情には隠し切れない後悔や焦燥の色が浮かんでいた。彼が狂的ともいえるその敵意と憎しみをむき出しにするのは、あくまで糸巻ただ1人に対してのみである。それ以外の存在に対してはえげつないとはいえそれ止まりであり、身内に対してはこうして人並みに責任を感じることもある。だからこそ、身をえぐるような屈辱を押してまで彼女の前に姿を現したのだろう。これは糸巻にも言えることではあるが、本人の強さに頼り切った恐怖による支配だけでは、決して人は寄ってこないのだ。
「……で。アンタは一体、この後どうしたいんだ?」
「戦争ですよ」
ズバリ切り込んだ糸巻の声に伏せていた顔を上げ、ノータイムで即答する。
「まあ人数の都合上、そこまでの規模にはならないでしょうが。抗争、というの
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