ターン19 幕間の妖狐
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る者にとって、その名の示す意味はあまりにも大きい。神聖視されている、といってもいい。だから糸巻も鼓も口ではこう言っているものの、たとえ自分たちがどれだけ追い込まれようと、このイベントを中止するなどという判断は最初から選択肢に入ってはいない。
開催は決定事項。そのうえで、次善の策を練る。
「とはいえ、何狙ってるのかさっぱり見えてこないのが不気味なんだよなあ。会場の爆破か?参加者の闇打ちか?一般客だって集まるんだ、単に「BV」を起動させるだけでもそれなりに被害は出る」
「だが、我々デュエルポリスが会場に散らばれば妨害電波で……ああいや、そういえば本部に話が来ていたな。お前が見たとかいう、実体化率がこれまでの比にならない最新式のことか」
「ああ。巴のヤロー、くっだらねえもん作りやがって。デュエリストをなんだと思ってんだ、今度会ったらいい加減マジで締めてやる」
そう息巻いて握り潰したままだった煙草の空き箱をぐっと持ち上げ、ちょうど直立した人の首あたりの高さで両手を使いギリギリと締め上げる。万力のような力によってすっかり原型をなくした空き箱を遊歩道を挟み向かい側の自動販売機近くにあるくずかごに投げ入れたところで、ふと何かに気づいた鼓が弾かれたように立ち上がった。先ほどまでとはまるで違う冷たい目つきでデュエルディスクを起動するその姿にただならぬものを感じ、糸巻も反射的にデュエルディスクの電源を入れてから彼女の視線の先を見る。
その目はすぐに、驚愕に見開かれた。
「おはようございます、いい朝ですね。もっとも私としては、朝一番から貴女の顔なんてもの拝まなくてはいけないので気分は最悪ですが」
敵意はないと言わんばかりに両手を肩の高さまで上げ、これ見よがしに両手を開いて何も持っていないことをアピールしながら近づいてくる存在。その男の名を、彼女たちはよく知っている。
「噂をすれば、か。久しいな、『おきつねさま』……巴光太郎」
「貴女に直接お会いするのは随分と久々ですね、『錬金武者』の鼓千輪さん。フランス支部でのご活躍、拝見させていただきましたよ。まったく面倒なことをしてくれました、おかげで後始末が大変でした」
字面だけ見れば何気ない挨拶にも聞こえるが、両者を隔てる壁は大きい。「BV」付きのデュエルディスクと一本松一段を倒すほどの腕前を持ち、人一人を半死半生に追い込んでなおかつ一切の手がかりを残さない用意周到さ。そしておまけに、この家紋町に出現する存在。口に出しこそしなかったものの、2人の中でその容疑者リストのぶっちぎりトップで名前の挙がっていた男。それが、自分の方から彼女たちの前にその姿を現したのだ。どれほど自分が無防備であるとアピールしようが、そんなものは信用するに値しない。
「なんのつもりかはどうだっていい。アンタ
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