ターン19 幕間の妖狐
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「チッ、おい鼓!そっちはどうだ、何かあったか!?」
幾分か八つ当たり気味に怒鳴りつける糸巻の声が、自然公園に響く。太陽はようやく東の空から顔を出し始め、まだ宵闇の残滓が西の空を染めつつも、急速に東から差し込む陽光によって上書きされていく時間。
そんな時間には似つかわしくない怒声に対し、これまたその声色だけで仏頂面が思い浮かぶほどの不機嫌そうな返事が飛ぶ。
「こっちも駄目だ。あたり一面に草が潰れた後……何か壁のようなものでも実体化させたんだろう。逆に言えば、それ以外何も出てこない。誰かは知らんが、逃走経路を塞ぎつつこの証拠隠滅。相当の手練れだな」
時刻はまだ早い。しかし彼女たちにとっては、それはあまりにも遅すぎた。
一本松一段が全身に大火傷を負い、意識不明の重体で病院に担ぎ込まれたのが昨夜の12時。その尋常ではない怪我の程度と全身が焼け焦げているにもかかわらず現場はその足元すらほとんど燃えた様子がないという異様な状況から、「BV」によるものだと当たりがついてデュエルポリスの2人に連絡が来たのがその4時間後。それだけでも致命的な伝達の遅れだが、しかしその12時という数字すらも彼が何者かに襲われた時刻とイコールではない。
と、そこで鼓の携帯がシンプルな着信音を響かせた。朝の空気に響き渡るそれをすぐさま手に取り、相手を確認しすぐさま耳に当てる。
「はい、こちらデュエルポリス……はい、わかりました。それで、被害者の容体ですが……はい、ありがとうございます。引き続き治療のほど、よろしくお願いします」
「病院か。なんだって?」
通話中にそばに来ていた糸巻が、今にも彼女を揺さぶりかねない勢いで問いかける。
「少し落ち着け、糸巻。まず容体だが、まだ意識は戻りそうにない。ただ、いいヒントが見つかった。被害者の付けていた腕時計だが、それがどうも襲撃された時間に壊れて針が止まっていたらしい。それによると襲撃時刻は昨夜、午後8時ごろだそうだ」
「8時?アタシらと別れてすぐか。それだけの怪我して丸々4時間も野外で放置……キッツいな」
「辛うじて一命はとりとめたらしいが、まあ危険なことに変わりはないな」
普段の調子はどこへやら、完全に真剣な仕事モードでひそひそと話す2人。普段から時間帯を考慮した周囲の迷惑などお構いなしなこのタッグが珍しく声を潜めているのは、その場にいる3人目の調査者の姿があったからだ。
そして、鼓はともかく糸巻が柄にもなく他人に気を使ったのが悪かったのか。折よくその3人目が、ぎこちなく松葉杖にもたれかかりながらよたよたとやってきた。目の下に隈のできた見るからに陰鬱な、しかしどこか鬼気迫る表情で口を開く。
「糸巻さん、こっちも裏取れました。叩き起こしてやりましたよ……一本松先輩、やっぱりゆうべは
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