第五十五話「発見」
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理想郷と錯覚するほど美九の現状は良かった。しかし、唯一のしこりがあった。
「……く」
五河士織。その名と顔が再び美九の脳裏をよぎったのである。突然の事に美九の顔は皺が寄った。
「士織さん……許しませんよ……」
ここにはいない士織に向けて呪うように呟く。あまりの迫力に八舞姉妹と四糸乃が「ひっ!」と小さく悲鳴を上げてしまう程である。
「……」
そんな美九を彼女はやはりこうなったか、という表情で見ていた。天央祭前に士織としての五河士道にあったのは一回しかないが普段の美九の様子からたいそう気に入っていたのは知っていた。それだけに真実を話す事は出来なかった。もし、美九がそこまで入れ込んでいなければさっさと真実を話していただろう。
これまでの事が脳裏をよぎったのか?美九は口を抑え前のめりになる。
「お、お姉様……!」
「だ、大事ないか!?」
「戦慄。誰か袋を」
三人が慌てた様子で声を上げる。美九は「大丈夫ですぅ」とみんなの動きを制しギリ、と歯を噛みしめた。
「許さない……許さない……ッ!私の心を弄んでェ……ッ!」
美九は震えを抑えるように肩を抱き二の腕をがりがりとかきむしる。美九の脳裏には士織を男だと思い行ってきたことが走馬灯のように浮かんでいく。その度に美九はブワリと鳥肌が立つ。
「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さないぃぃぃっ!!!」
「……少しは落ち着け」
何度も「許さない」と連呼する美九を彼女は抱きしめて落ち着かせる。自身の胸に美九の頭を寄せ後頭部を優しくなでる。彼女に抱きしめられたからか美九の震えは少しづつ収まっていき少しすると完全に収まった。
「どうだ?少しは落ち着いたか?」
「……はいぃ。でも、もう少しだけこのままでもいいですか?」
美九は顔を上げて懇願する。狙ったわけではないが自然と上目遣いになっていた。それを受けた彼女は大きく眼を見開くもすぐに笑みを浮かべそのまま後頭部を撫で続ける。
暫くそうしていると美九は士織を忘れたように落ち着く。そろそろいいかと彼女が思った時だった。やめそうになったのを感知したのか美九は彼女の腰に腕を回しホールドする。完全に動けなくなった彼女は突然の事に困惑しながら美九を覗き込む。
「どうしたんだ?美九」
「……もう少しだけ先に……」
美九の表情は赤らみ鼻息を荒くしていた。まるで、発情しているように。
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