第六十七話 元康初陣その七
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「そうしてな」
「やがてですな」
「除かれるであろうな」
「怪しい御仁なら」
「確かに戦は得意ではなかろう」
元康の話からもだ、雪斎は津々木はそうした者だと見ていた。戦は然程強い者ではないというのだ。
「やはりな、しかしな」
「それでもですな」
「瞬く間に織田家の重臣となった」
「勘十郎殿の執権にまで」
「確かに織田弾正家は才ある者を取り立てる」
それが身分の低い者でも外様でもだ。
「滝川殿や丹羽殿もそうであろう」
「織田家で最近名を挙げている」
「柴田殿も実はな」
彼もというのだ。
「家柄はよくはない」
「しかしですな」
「今は織田家の宿老の一人」
信長の下のというのだ。
「これは前田殿や佐々殿もであったな」
「左様ですな」
「特に近頃は」
ここでだ、雪斎はその顔を鋭くさせて元康に話した。
「木下殿じゃな」
「元は一介の百姓だったとか」
「お主も聞いておるか」
「はい、最初は足軽でしたが」
「足軽頭になりな」
「今では侍大将だとか」
「侍大将なら相当じゃ」
家臣の中でもというのだ、このことは織田家に限らず他の家でもそこまでの身分ならばかなりのものだ。
「そこまで用いるとはな」
「凄いものですな」
「そうじゃ、しかしな」
「弾正家で身分に関わらず用いられても」
「人柄も見られておる」
信長がというのだ。
「しかとな」
「そのうえでのことなので」
「それでじゃ」
「信用出来ぬ御仁は」
「弾正殿は用いられぬ」
信長は人の能力だけでなく人格も見るというのだ、おかしな人格の持ち主は間違っても用いないというのだ。
「最初からな」
「そうなりますと」
「うむ、津々木殿は弟殿が用いられたと思うが」
「だから勘十郎殿の執権にですな」
「なったにしろ拙僧が聞くに」
「勘十郎殿もですな」
「愚かな御仁ではない」
信行、彼もというのだ。
「確かに弾正殿の様な群を抜いた資質や派手さはないが」
「それでもですな」
「それなりに出来る、尾張一国ならな」
「治められる方ですな」
「そう思う」
雪斎は信行の資質は尾張一国とした、それもかなりであるが信長はそれに止まらないと暗に言うのだった。
「それだけにな」
「怪しい御仁は」
「勘十郎殿も用いられぬ」
そうするというのだ。
「やはりな」
「左様ですな」
「しかしな」
「しかしとは」
「妖術を使う者ならどうか」
「妖術ですか」
「うむ、拙僧もまだ見たことはないが」
それでもというのだ。
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