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ユア・ブラッド・マイン 〜空と結晶と緋色の鎖〜
第5話『発見』
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くる時間帯にに知らない場所で一人なのは流石に心細い。 大まかに景色やロケーションの分かる写真だけ撮って、来た道を今度は一人で歩く。

「……先輩のバカ」

 思わず呟いた言葉が、誰もいない空間に吸い込まれていった。





「……ックシ!!」

 夏とはいえ夕暮れ時はやや肌寒い。 くしゃみの一つや二つも出るだろう。
 展望台から飛び降りた玲人は、記憶を頼りに虎徹山の森を走っていた。 時折振り返り、展望台の位置を確認する。
 “アレ”が見えたのはこの辺りか。 少なくともそう遠くはないだろう。 そう思い、足を緩めてできるだけ音を立てないように歩く。

「……さて、っと……どこだ……?」

 油断しないように周囲の気配を探る。 戯れに受講していた戦闘訓練の授業がこんなタイミングで役に立つとは思わなかった。
 玲人が双眼鏡で見た“アレ”???一つ目の怪鳥は何処だ。
 いくら『歪む世界』に視覚が侵されていようと、“アレ”を見間違う筈がない。 そもそも、玲人が見る『歪む世界』は影だけで構成されている。 怪物など見えるはずがない。
 つまり、あの怪鳥は実在している可能性があると考えることが出来る。 あんな化け物を現世に呼び出す方法があるとすれば……

「……鉄脈術か」

 『鉄脈術』。 玲人の持つ『歪む世界』を活用する方法の一つだ。 確か理論は、『歪む世界』を魔女の『鉄脈』に転写して云々云々。 これに関しては興味がなかったのであまり真面目に授業を受けていなかった。
 とりあえず、超能力やら魔法やらが使えるようになるとだけ覚えておけばそれでいい。 玲人はその『鉄脈術』の力であの怪鳥が現れた可能性を考えていた。

「(実際に鉄脈術を使われてたら俺じゃ何ともならないが……様子を見るくらいなら……)」

 出来るだけ木陰に隠れるようにして慎重に進む。
 別に、仮に鉄脈術を使っていた者を見つけたとして、どうにかしようと考えているわけではない。 様子を見て、燕に報告する。 それだけだ。
 しばらく歩いていると少し開けた場所に出る。 どうやら崖の下のようで、目の前に岩壁が広がっていた。

「(行き止まり。 見失ったか……)」

 見渡してみても耳を澄ましてみても怪鳥の姿は影も形も認めることができない。 完全に見失ってしまったようだ。 しかし、あれだけ大きい鳥が飛べば枝の数本折れていそうなものだが。 ここにくるまでにそのような形跡は見つからなかった。
 そんなことを思いながら、何の気もなしに首から下げたリアクトカメラのシャッターを切る。 森の景観自体は悪くない。 あとは現像した時に玲人の『歪む世界』がどのように写し出されるかだ。 まぁ大方森を台無しにするほど影が荒れ狂っていると思うが。

「……帰るか」


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