親しき仲にも礼儀なし
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コン、コン
……夢を、見ていた気がする。
今よりももっと子供だった頃の夢、シルヴァディやレイと出会った頃の夢。
あのときは、嫌いな姉さんたちと顔を合わせない毎日が楽しかった。スズが与えてくれた島キャプテンの立場でポケモンバトルを一生懸命練習して決められた人とゼンリョクでバトルできればそれ以外何もいらなかった。……模犯怪盗であり家族みたいなクルルクと一緒に居られるだけで嬉しかった。
コンコンコン!
でも、今はそれだけじゃ足りない。自分で選んだ怪盗としての立場で、盗むと決めたものと盗む。そうすればわたしもクルルクみたいになれる。他人を楽しませて、笑わせることができるようになる。
昨日は、チュニンにそういうことが出来たと信じたい。
ドンドンドン!
……さっきからなんの音?
【お客さんのようですね。このままだとドアを突き破ってくるかもしれませんよ】
「誰かがわたしを捕まえに来た?」
ホテルの従業員がこんな大きな音を立ててドアをノックはしないはず。さすがにドアを壊すとは思えないけどノックの音はどんどん強くなる。
わたしは朝が苦手な方だ、だから正直、まだ頭がぼやける感じはある……でも、今は怪盗としてここに来てるんだから、不意の相手でもパジャマにナイトキャップで寝ぼけまなこなんて姿は見せられない。
「レイ、もうちょっとだけ抑えてて!」
アローラにいるときから姉さんやクルルクが私の部屋に勝手に入らないように、寝るときはツンデツンデの一匹をドアにくっつけておく習慣がある。その子に念力でドアを抑えてもらいつつ、わたしはささっと着替えを済ませる。
昨日のわたしとは別人だとシラを切るために、ロングヘアのウィッグに長めのスカート、ブラウス姿。それに背丈をごまかすための厚底靴。スカートの長さで靴を履いているのはばれないようになってる。
一応鏡で変なところがないか確認して……よし。昨日とはだいぶ印象が違う、身長170近い大人のお姉さんになれたはず。
【ラディの変装術も板についてきましたねえ】
「……うっさいわね」
わたしは苛ついた声でそう呟く。
【あら、怒られてしまいました】
「違う、ドアを叩いてくるから怒ってるお姉さんになりきろうと思って」
【ふふ、わかってますよ】
「もう……それじゃレイ、もしいきなり攻撃してきたらよろしくね」
いつでも攻撃できる状態になったレイを背に、わたしはドアに手をかける。相変わらずドアは大きな音をたてていた。
とにかく、まだドアを叩く人に一言怒ってやろう。
「もういい加減にして! 人が気持ちよく寝てたのにさっきから何よ!」
思い切りドアを開けるなりそう叫ぶ。
ドアを叩いていたのはチュニンだった。怒っている
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