本編
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『Ladies and gentlemen!』
突然聞こえてきた声に、周りのざわめきが大きくなった。どうやら、店内にあったスピーカーから流れているようだ。
『今宵、皆様にマジックショーをお披露目しましょう!』
その直後、店内の真ん中にあるステージに、パッとライトが照らされた。みんなが一斉にそちらを向くと、そこに現れたのは???
「かっ……怪盗キッド!?」
誰かがそう叫んだのを皮切りに、そこら中から歓声やら悲鳴やらが飛び散った。と言っても、怖がったりする人は存在せず、興奮の声や嬉しい悲鳴、そして黄色い歓声ばかりのようだった。
怪盗キッドは一礼すると、そのまま簡単なマジックショーを始めた。ここにいるお客さんの視線は、彼の方に釘付けだ。
私はマジックショーをチラチラ見ながら、周りの歓声と拍手に紛れて、やっと扉の前に辿り着いた。
マジックショーを見たい気持ちも少しあったけど、「マジックショーのお手伝い」をしてるんだと自分に言い聞かせて、すぐに扉を開けて廊下に出た。
廊下はシーンと静まり返っている。誰もいないのだろうか。
これからどうしたらいいのか、キョロキョロしつつ廊下を進もうとすると、後ろからガチャッと鍵の閉まるような音がした。
「お待ちしてましたよ、お嬢さん」
驚いて後ろを振り向くと、さっきハンカチを拾ってくれた、ウエイトレス姿の怪盗キッドがそこに立っていた。彼の後ろにある扉の取っ手は、いつのまにか鎖でぐるぐるに巻かれて、南京錠がかけられている。
「え……あれ……?」
扉は閉められてしまったが、扉の中の歓声や拍手はかろうじて聞こえている。その声からして、まだマジックショーの真っ最中だ。
「あなた、もしかして……分身もできるの?」
「まさか。私は魔法使いではありませんからね」
彼は笑い混じりにそう言って、肩をすくめてみせた。つまり、ちゃんとタネはある、ということなのだろう。
「それではお嬢さん、ちょっと失礼しますよ」
「え? うわあ!?」
気がついたときには、私は怪盗キッドに抱えられていた。いわゆるお姫様抱っこである。そのまま廊下を走り出す彼に、私は慌てて声をかけた。
「わ、私走れます!自分で走る!」
「これ以上、女性にお手を煩わせてしまうのは紳士の恥です。少しだけ我慢を」
「う……はい」
そんな風に言われたら、もう何も言えない。少し恥ずかしいけど……こういうのも、たまにはいい経験だと思うことにした。
そんなことを言っているうちに、ついにレストランの屋上までやってきた。月明かりのおかげで、もう周りが見えるようだったから、私はサングラスを外して、ひとまずバッグの中に入れた。
周りを見渡すと、そこではもともと警備を
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