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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
最高に最低な──救われなかった少女 U
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少しばかり遅れてしまって、悪かったね」


蠱惑にも近い、甘美な声。腕に抱かれながら頭を撫でられている感覚に心地良さを覚える暇すらなく、理子は嗚咽を吐き続ける。

どうしてそんなに、如月彩斗は自分のような劣等種を見捨てずに、手を差し伸べてくれるのだろうか。
いや、劣等種であるからこそ──それが見るに耐えなくて、拾い上げてくれたのだろうか。そんな憶測が理子の脳裏を過ぎる。


「っぐ、なんでぇっ……なんで、理子なんかっ……」


とめどなく溢れ出てゆく涙を抑えようと、必死に目頭を拭うのに──いわば蛇口を締めたにも関わらず──それは漏れ出てくる。

もう、自分も彼も、分かっているのだ。どれほど自分が我慢(・・)をしていたのか。自分を変えるために、努力をしてきたのか。そして、認めてもらいたかったことを。居場所が欲しかったことを言えないまま過ごしてきた、幻想に塗れたあの日々を。


「……なんで? ふふっ、愚問だね」
「ぐも、ん……?」


そう、愚問。そう彼は言った。


「理子のことを、認めているからだよ。努力家で、一途で、自分が苦しいことを誰にも話せなくて、それでもなお、自分を変えようとする君のことを──見捨ててはおけないから」


紛うことなき本音だよ、とでも言うようだった。

つい数分前まで、ふざけて如月彩斗の腕に抱きついていた自分が、今は抱きしめてもらう側に回っている。暖かな温もりは、果たして幾年ぶりに感じただろうか、と理子は一考した。

羞恥心なんて感情は既にかなぐり捨てている。この身体を満たしているのは、言い知れぬ感情の暴力だ。彼から告げられる一語一句に込められた意思が、余すことなく彼女の心臓を穿ってゆく。
そして、治癒されていくのだ。元通り──否、それ以上に。


「……目標は、時として重荷にすらなる。覚えておいてね。諦めろとは言わないけれど、休息も必要だよ。もっと言えば、今がその時じゃないのかな。一時の空白に何が起きるかで、その先にある運命は変えられる。そこに賭けてみようとは、思わない?」


言い、彼は理子の顔を覗き込んだ。


「賭け、る……?」


そう、賭け。その優しい笑みが、酷く印象的で。


「だから、乗ろうが乗るまいが、理子の自由だよ」


目尻に溜まった涙を指で拭いながら、理子は問い掛けた。
あれだけ泣き腫らしていたにも関わらず、溢れ出てゆく感情の渦を止めることが出来なかったにも関わらず、その『賭け』という言葉だけで──あたかも魔術に魅せられてしまったかのように、ピタリと止んでしまった。

実に(いや)らしい人間だろう。都合の良い時だけに他人に頼りきって、都合の良いことだけに興味を示して。

それでも自分
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