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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
最高に最低な──救われなかった少女 U
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「理子のことを──好きになってくれますか?」


その想いの吐露は、締め付けられた声帯を無理にでも震わせるような、それほどなまでに、確固たる断案の意が込められていた。
そう、それでいいのだ。聞きたかったのは、その言葉だ──。


「……理子。君は、本当に──」


そうして伸ばした腕を、彼女の頭に乗せる。肩が僅かに跳ね、嗚咽ともつかない喘声が漏れ出た。水晶体に浮かぶ湖の湖面は、揺れる水面そのものだ。その縁から水滴が一筋、ツゥ、と零れ落ち、音を立てて滴下した。


「──強がりさん、だね」


小さく笑み、親指の腹で、その涙を拭いとってやる。
これはまさに、峰理子という人間が零した、衷心そのものなのだ。大部分が悲哀に満ち満ちた、今という今まで、誰にも告げることが出来なかった──少女の、弱さの根幹だ。


「……どういう、こと?」


そう言って小首を傾げる理子は、どうやらこの発言の真意を、理解出来ていないらしい。本心か、はたまたこの後に及んでお得意の演技なのか、は分からないけれど……。
いやはや、面白いね。自分からソレ(・・)を欲してきたにも関わらず、この発言の裏が読めていないのだから。


「だから、字の如くだよ。いつまでそんなに強がってるんだい? もうそろそろ、楽になってもいいんだよ。隠し通す必要なんてない。……そうだろう?」


全て知っているからね──。そんな意図を込めながら、先程の言葉は、一語一句に想いを乗せて告げた。
理子という少女の何を知っているのか。その答えは実に簡単だ。ただしそれは、《物語》と冠した今までの《日々》が無ければ、まったく気がつけなかったことになる。

あの日。ハイジャックの日から──理子の言に従えば、二重奏を奏でたあの日から──その伏線は幾つか張られていたのだろう。
今になって思えば、理子が《イ・ウー》の一員であることも、初代リュパンを越えようとしたことも、司法取引で有意な情報を提示してくれたことも、今に至る想いの吐露の、伏線だったのだ。

そして、それが結び付ける先は、たった1つだけ──。







嗚咽ともとれぬ声が、リビングに響き渡る。悲哀と孤独が形骸化したような、今の今まで秘めていた、峰理子という少女の弱さそのもの──それが身を知る雨となって、零れ落ちた。

自分は何をしているのだろう。……そんなことは分かりきっている。駄々を捏ねた子供のように、如月彩斗の腕に抱きついて、あまつさえそれに抱かれたまま、泣き腫らしているのだ。
もはや自分自身に投げつける、呪詛にも近い言葉だった。


「……辛かったろう。いいんだよ、泣いても。恐らく今、君をいちばん分かってやれるのは、俺だけだろうからね。ようやく気付けた。
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