暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第5話:黄金の時間
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のバックルの左右が反転し、再び彼がレバーを動かすとバックルは最初の形に戻る。

 すると彼が身に着けているベルトから音声が鳴り出した。

〈ルパッチマジックタッチゴー! ルパッチマジックタッチゴー!〉

 突然鳴り響いた歌の様な音声に翼が彼のベルトを凝視する中、彼は右手をバックルの前に翳す。

〈リカバリー、ナーウ〉

 バックルの前に翳した右手を今度は少女に向けるウィズ。すると颯人の時と同じように少女の体が魔法陣に包まれ、次の瞬間その顔色にみるみる生気が宿っていく。

 奏と颯人はその様子に安堵し、翼は明らかに異質なウィズの力に興味を抱いた。

「あの、先程から気になっていたんですが、それは?」
「魔法だ」
「ま、魔法?」

 素っ気なく答えるウィズに、翼は首を傾げる。そんないきなり魔法などと言われても、正直納得できない。

 だが事実として、今目の前で起こった現象は魔法と言う言葉でしか表現できず、翼はそれ以上何も言えなくなってしまった。

 考え込む翼を余所に、少女がもう大丈夫だと分かると颯人はその場で立ち上がった。

「さってと。それじゃそろそろ行くとしますかね」
「え? 行くって……?」

 颯人の言葉に奏は困惑した。やっと再会できたのに、もう何処かへ行ってしまうのか? そんな不安を滲ませた言葉に、颯人は困ったように笑みを浮かべる。

「悪い、そういう約束なんだ。奏をここで助ける代わりに、暫くウィズの手伝いしなきゃなんねえんだよ」

 だから暫くまたお別れだ。そう口にする颯人に、奏は泣きそうな顔で彼の手を握り彼を引き留めようとした。

「そんな、嘘だろ!? やっとまた会えたんだぞ!? それなのに、もうさよならだなんて、そんなの……」

 彼女はもう十分待った。3年間である。この3年間、ノイズを討伐しながら彼の事を探し続けた。
 家族を奪われた事への恨みはノイズを倒すことで和らぎ、ある自衛官に言われた言葉でノイズへの復讐心は大人しくなった。

 だが、颯人に関しては違う。彼は目の前で、無力だった頃の奏から無理矢理引き離されてその後影すら踏むことが出来なかったのだ。
 あの時の無力感は今でも彼女の心を苛み、彼の安否が分からなかったこの3年間、発作の様に心に湧き上がる不安は彼女の精神を大いに蝕んだ。

 だからもういいじゃないかと。これからは共に居て、3年間離れていた分のあの輝くような時間を取り戻そうと奏は彼の手を掴んだ。

 縋る様に自分の手を掴む奏に、颯人は申し訳ない気持ちになった。彼女の気持ちは分かる。彼だって本当は、もう彼女と離れたくはなかった。

 だが、しかし──────

「本当、ごめんな。折角会えたってのにまたお別れだなんて、俺だって嫌だよ」

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