漏れ出す力
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──●●――
あの人の髪の色と一緒だ――。
自らの血にまみれた体と手を見ながら、兵藤一誠はそんな事を思っていた。
赤く──紅い美しい赤。
目の前に佇む黒い翼を生やした男と、倒れた自分の間に守るように彼女は───リアス・グレモリーはその紅い長髪を夜風に靡かせ立っていた。
(この下からの角度だとスカートの中が見えそうだ...み、見てぇ....!!!!)
こんな時になに考えてるんだろう、と己の性欲に呆れ返るがそれを声に出す力すらもう彼には残っていなかった。
槍で貫かれ、風通しがよくなってしまった腹からは笑えない程の血が出ており、今までに感じたことのない激痛が彼を襲う。
(夕麻ちゃんに殺された夢を見てから体がおかしくなって今はファンタジーじみた男に、光の槍のようなもので腹を貫かれたと思ったら、リアス・グレモリー先輩が来て....もう頭いっぱいだ)
消え行く意識の中で兵藤一誠は顔をあげ、リアス・グレモリーへと視線を向けた。
───意識を失う直前、ぼやけた視界の中で紅の彼女が微笑み、薄れゆく意識と狭まる視界の端に最後に映ったのは紅。
ではなく、飲み込むような黒と眩いばかりの白だった。
――●●――
「あら、気絶してしまったわ。確かにこれは危険な傷ね。急がなきゃマズイかもしれないわね」
後ろへと投げた笑みをスッと消し眼前の堕天使。
──ドーナシークへと最終通告だと、威圧を以て睨み付ける。
「今すぐここから消えなさい。堕天使がこの私の管轄する町に何故いるのかは、今はどうでもいいわ。実力差が分からないわけでもないでしょう?今はアナタ如きに、時間をかけていられないの」
侮蔑を込められた忠告に、ドーナシークは青筋を立てながらもここで死ぬわけには行かないと忠告通りにこの場を去ろうとした。
言外にアナタ程度いつでも滅ぼせる、と言わんばかりの傲慢さ。
だがそれは事実であり、ドーナシークとしてもわざわざグレモリー管轄の領地に侵入したのには、理由がある。ここで死ぬわけにはいかなかった。
「《紅髪の滅殺姫》のご忠告痛み入る。遺憾だがここは退かせてもらうとしよう........ッッ!!!?」
瞬間。違和感を同時に感じたリアスとドーナシーク。
産毛が立つほどの悪寒。空気が一瞬で張りつめ、心なしか温度すら下がったような気がする。
これは別格の強者と出会った際に感じるものと、非常によく似ていたが、これはもっと異質な───
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