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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第4話:迫る分岐点
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の中では仮面の男に対する怒りが未だに渦巻いていた。彼女にとっての希望を、彼女の手から遠くへと連れ去った事を、彼女は未だに忘れずにいたのだ。

 そんな彼女の目が、舞台裏でスタッフの邪魔にならない場所で座り込んでいる相方の翼の姿を見つけた。

 本番を前に、緊張しているのかその表情は愁いを帯びている。
 それを見て、彼女の中に悪戯心が芽生えた。

 奏は一度その場を離れ自販機で冷たい缶ジュースを買うと、気付かれないように翼の傍に近寄り彼女が着ているレインコートの首筋にそれを突っ込んだ。

「うひゃいっ!?」
「あっはっはっ! どうした翼、そんな辛気臭い顔して?」
「か、奏ッ!? もう、止めてよこういうのッ!」

 突然首筋に走る冷たさに思わず悲鳴を上げる翼の様子に、奏は堪らず笑い声を上げる。対する翼は、相方からの突然の悪戯に抗議の声を上げる。

 翼の抗議を聞き流し、奏は自分用に買った缶ジュースの蓋を開け勢いよく口に流し込む。それを見て翼もこれ以上の抗議は無駄と諦め、大人しく首筋に突っ込まれた缶の蓋を開けた。

「んぐ、んぐ……ぷはぁっ! いけないねぇ、そんなに油断してちゃ。防人たる者、どんな時でも気を引き締めていかないと。例えそれが、ライブの本番前だろうとね」
「ん……はぁ。ご忠告どうも」
「どういたしまして」

 奏の忠告、翼はやや不貞腐れ気味に返すが、奏は全く気にしていない。

 暖簾に腕押しな反応に、翼はまたしても諦めの溜め息を吐く。

 もうこのやり取りも何度目だろうか。
 共にノイズと戦うシンフォギアの装者としてチームを組み始めた当初はそれこそ、手負いの獣もかくやと言うくらい周囲に敵意を振りまいていたというのに、今はこれだ。

 狂犬もかくやと言う凶暴性に距離感が掴めず辛く当たられたこともあったが、時が経ち彼女との間の壁がある程度無くなるとそこからは一気に距離が近付き、今では友であり姉のような存在となっていた。
 彼女が変わる切っ掛けとなってくれた、あの自衛官に感謝だ。

 あの頃に比べれば今は付き合いやすさで言えば大分マシだが、正直事ある毎に悪戯を仕掛けてくるのは勘弁願いたかった。

 翼の内心を知ってか知らずか、奏は背後から彼女に抱き着き話し掛けた。

「ま〜ったく、相変わらず翼は固いぞ! そんなにいつも真面目やってると疲れるだろ? 少しは肩の力の一つも抜けって」

 な? と言って軽くウィンクする奏に、今度こそ翼は本当に肩から力を抜いた。こう言うところが奏は上手いと、翼は思っていた。
 何と言うか、線引きが上手いのだ。こちらが本当に嫌がったりする境界を絶妙に見極めていた。

 敵わない。翼は心からそう感じた。こういう駆け引きで、奏に敵う者はいないだろう。翼はそう信
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