I MY 模糊のヒーローショー
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ツンデツンデにダメージはないけど、困ったようにボールに戻るのもいつものことだった。
グソクムシャやハッサムがなだめるように自分の鋏や爪でシルヴァディを静止すると、彼は決まって勝手にボールに戻るのだった。
「シルヴァディ……いつも付き合ってくれてありがとう」
……スズもわたしがそうしたトラウマを抱えていたからこそ鎧で身を隠す少年のヒーローの役に機械のような獣のシルヴァディを与えてくれたんだろう。他にもハッサムやグソクムシャ、男の子らしく振る舞うことが自然なポケモンを与えてくれた。
シルヴァディにとっては敵であるウルトラビーストに協力させられている不服は消えないようだったけど、一緒に戦ってくれていたんだ。
今も昔もそれにはすごく感謝してる。……でも、わたしはひどく我儘だった。
「……可愛いなあ」
半袖半パン、今の自分の体とだいぶ近くなったわたしが、ブティックのショーウインドウを眺めている。そこにはピンクでフリルのついた洋服やユカタという藍色の薄い服が並んでいた。
窓に映る男の子の格好の自分と、窓の向こうの可愛い女の子を見てため息をつく。
「わたしも、あんな風に……わ、わかったってばシルヴァディ」
つぶやくと、ボールからシルヴァディが出てきてわたしを頭でぐいぐいと押す。
服を眺めるのをやめろと言いたいのはわかったし、実際女の子から離れさせるためにシルヴァディは協力してくれているのだから当たり前の反応。だけどわたしはやめられなくて。
そんなやり取りを何ヶ月か繰り返したとき、わたしは言ってしまった。
「……やめてよ! ヒーローのフリはちゃんと続けるんだから、今くらいは好きにさせて!!」
シルヴァディの表情を、わたしは見ることができなかった。ただ、その一言でシルヴァディはわたしを離れて立ち去って。
あとで、もうわたしと戦う気はないことをスズから告げられた。
「シルヴァディ……シルヴァディの力があればきっと勝てる」
だから今朝、マーシャドーの強さを分析してそう思ったわたしの考えがひどい我儘であるなんてわかっている。でも、マーシャドーの攻撃力を倍増させた上で勝つ方法が思いつかなかった。
スズが転送してきたシルヴァディは、わたしの怪盗姿を一瞥するなり唾を吐き捨てた。
今更なんのつもりだ、と。お前がヒーローであることすらやめたことなんてわかっているんだ、と。自分の前にウルトラビーストを見せるな、と。いろんな怒りを顕にする彼に、わたしは頭を下げる。
「……そうだよ。今のわたしはもう男の子やヒーローのフリなんてしてない。男の子の格好をするときもあるけど、ただの変装。わたしはわたしの目標のために怪盗をやってる。そのためにあなたの力が必要なの」
怒声が
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