百鬼夜行の主
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まだ明日もありますし、まだ開始から30分も経ってないので一度治してから対策を立ててきてもらっても大丈夫ですよ!」
チュニンは今度はジャンプではなくゆっくり歩いてきて、対戦後の握手を求める。今までの爆ぜる炎のように鋭い言葉と動きじゃなくて、まるで、怪我をした小動物が怯えないようにするためのやんわりとした態度だった。
「また戦えるのを楽しみにしてますからね! せっかく一番に来られる実力があるんですから、期待してますよ!」
わたしの後ろに、ぼんやりとした光が浮かび上がる。ここに入れば最初のエントランスに戻るんだろう。
「……絶対、絶対今度は勝つから」
「────」
わたしがワープホールに入る前にチュニンが見ている人たちには聞こえないように小さく囁いた。その言葉にわたしの肩が跳ねる。
その言葉を噛み締めていると、目の前はポケモンセンターとカードショップを兼ねたお店だった。
【ラディ……スズのサポート不足もありました。だから、気を落とさずに対策を練りましょう】
「うん……わかってる。まだ予選落ちしたわけじゃないし、きっとあの強さにはカラクリがあるはずだよね」
あんな攻撃力から先制技を出されたら、誰だって太刀打ちできない。だから何かあるんだ。あの攻撃力は。この失敗は、次に挑むときに活かせばいい。今まで失敗したときだって、そうしてきた。
そう考えながらポケモンセンターに入ってスターミーにハッサム、ポリゴンZを回復してもらう。それから外に出て、ホテルの部屋じゃなくて人気のない海沿いまで歩く。
「スズ……ちょっと通信は切ってて。それから、マーシャドーについてできるだけ詳しく調べてくれる?」
【……わかりました】
携帯の電源を切って、ボールからツンデツンデを呼び出す。ツンデツンデは何も意思表示することなく、ただわたしの体を隠すように箱の形になってくれた。
リゾートの宝石みたいな明かりがないほぼ完全な暗闇。だからわたしの姿は今誰にも見られないと安心できる、だから、
「レイ、わたし負けちゃった……一番に勝つって決めて……真剣勝負で勝つって決めたのに……なにも出来なかった……」
怪盗として振る舞ってなくても、変装してても、わたしはここにいる以上怪盗なんだ。だから、人前では絶対泣かない。できるだけ冷静を保って、負けたとしても普通の女の子みたいに弱いところは見せちゃだめ。
でも、ツンデツンデがわたしを隠している時だけは。頑張らなくていい。臆病で、周りに失望されることが怖いただのわたしでいい。
「チュニン、わたしに無理しなくていいって言った……キュービさんがわたしを呼んだ理由もわかったから、今からでももとの予定に変えてもいいんですよって……」
気遣ってくれたのはわかる。多分
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