フロンティア・オリジン
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静かなのもあるけれど、マイクをもっていないのに柔らかい声はエントランスによく通る。キュービさんはゆっくりと頭を下げた。
「こうして50人を超える方々が参加してくださることを、シャトレーヌとして嬉しく思います。尤も、人前にめったに出ないわたくしのことなどご存じない方も多いとは思いますが」
会場から、苦笑いが漏れる。
【とんでもない謙遜もあったものですね。バトルリゾートに人が集まるように身を粉にして尽くしたのはここに来る人間なら誰も知っていることでしょうに】
「今回はホウエンの方のみを対象としましたが、いずれは世界中の人々がポケモンカードを手にバトルを安全に楽しんでもらえる日が来るよう、これからも尽力したいと思います」
今度は、みんな静まりかえる。・・・・・・わたしも、少しどきりとした。
キュービさんならいずれ本当に世界中のポケモンバトルを変えられるんじゃないか──そんな気がするような、柔らかいのに絶対に折れない意思を感じる声。
【ここにいるのがスズでよかったです。他の管理者が聞いたら卒倒ものですよ。・・・・・・まあ、彼女らしいですけどねえ】
「さて、挨拶はこの辺にして、さっそく大会について話しましょうか」
今のところ、バトルの大会とだけ知らされていて具体的なルールについては一切告知されていなかった。
「かつて・・・・・・ポケモンバトルがまだどこででも許された時代、この場所は『バトルフロンティア』という名前でした。特殊なルールでのバトルに挑み、最後に強者たる施設の代表者が存在するというシステムだったのですが・・・・・・今回の大会ではそれにあやかり。『フロンティア・オリジン』と名付けたいと思います」
説明に耳を傾ける。挑戦するのは三つの試練、今日、明後日、四日後に一つずつ行われて、試練をクリアできないと脱落。最後に残るのは八人でその後決勝トーナメントが行われるらしい。
「そして優勝者には、ラストリゾートの秘宝である『緋蒼の石』をお渡しします」
ひそうのいし。そう呼んでキュービさんは首元の宝石を雫に触れるようにそっと持つ。サファイアとルビーが球体になるようにぴったりくっついて、まるで小さなモンスターボールみたいだった。あれが、わたしが盗む宝石。
「ホウエンに伝わる伝説のポケモン。グラードンとカイオーガを制御するための要石です。もちろん今は、誰も使用方を知らないのでただの綺麗な宝石ですよ? みなさんご存じかもしれませんが、この石をアローラの怪盗さんが狙うと予告されています。もしかしたら、大会の出場者に紛れ込んでいるかもしれません」
みんながその言葉で周りを見渡す。わたしも目立たないようにそんなフリをした。・・・・・・不自然に、思われてないよね。
「しかし、心配は無用です。
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