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戦国異伝供書
第六十六話 婚姻と元服その十

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「そなた達のことを考えよ」
「我等の武勲をですか」
「それをですか」
「第一にですか」
「武勲を挙げてな」
 そうしてというのだ。
「わしが褒美をやるしな」
「今川様もですか」
「あの方もですか」
「我等に褒美を下さいますか」
「そうして下さいますか」
「殿は功績を見られる方」
 このことにも定評がある、義元は功績を挙げた者に対しては惜しみなく褒美を与える男であるのだ。
 それでだ、元康は彼のことも言うのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「我等も」
「今川様からもですか」
「褒美を受けられますか」
「左様じゃ」
 このことも話した。
「だから戦えばな」
「褒美は思いのまま」
「殿だけでなく今川様も下さる」
「だからですか」
「思う存分働くのじゃ」
 戦の場でというのだ。
「よいな」
「さすれば」
「そして殿に勝ちを」
「是非もたらします」
「頼むぞ。幸いこの度の戦は吉法師殿は出られず」
 そしてというのだ。
「織田家の主な家臣の方々もな」
「出られていませんか」
「織田殿は」
「その主な家臣の方々も」
「油断は出来ぬが吉法師殿が出られると」
 元康は難しい顔で述べた。
「わしでは勝てぬやもな」
「織田殿ですが元服され」
 ここで服部が言ってきた。
「お父上が亡くなられた後に」
「瞬く間にであるな」
「はい、尾張の敵対する勢力を全て平定され」
 そのうえでというのだ。
「尾張を統一されてです」
「見事な政を行われてな」
「尾張は日増しに豊かになっておりまする」
「織田殿がうつけ殿とはとんでもない」 
 鳥居は袖の中で腕を組んで言った。
「むしろです」
「わしが言った通りであろう」
「恐るべき傑物ですか」
「わしは幼い時あの方によくして頂いてな」
「そこで、ですな」
「あの方を傍で見てわかっておった」
 信長がどういった者かということをとだ、元康は鳥居にも他の者達にも真剣な顔で話した。そうしてさらに言うのだった。
「うつけではなく傾いておられておってな」
「そちらであって」
「うつけ殿では間違ってなく」
「日々武芸と学問に励まれ」
「非常に見事な方でな」
「だからこそですな」
「今の様に尾張もな」
 この国もというのだ。
「それこそじゃ」
「瞬く間に一つにされ」
「豊かにされておる、しかし」
 ここでこうもだ、元康は言った。その顔はいぶかしむものになっていた。
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