第64話 踏み出す一歩
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だけだからアガットやシェラザードは知らなかったんだね。
「いいんですか?私達にそれを話しても?」
「どの道避けては通れない道だ。お前たちは既に身喰らう蛇という組織に触れてしまったんだからな」
「……どういうことですか」
「あのクーデター事件も身喰らう蛇が関わっていると俺は思っている」
「あのクーデター事件が……!?」
エステル達が解決したクーデター事件、それに身喰らう蛇が関わっていたというの?
「リシャールや空賊たち、ルーアンの市長といった事件を起こした者達は全員が記憶を失っていた。こんな真似ができる組織などそうはあるまい。それにリシャールは俺の行動をまるで知っていたかのように把握していた」
「確かにあのタイミングでクーデター事件を起こしたのって父さんがいなかったからよね、実際に本人も父さんを一番警戒していたし。でもなんでそんなことが出来たのかしら?」
「ヨシュアだ」
「……えっ?」
「ヨシュアが情報を流したのかもしれん」
ヨシュアが……でもどうして彼が?……あっ、そうだ……ヨシュアは身喰らう蛇の……
「そんな……嘘よ!ヨシュアがそんなことをするわけないわ!」
「だがヨシュアは姿を眩ませた」
「……ッ」
わたしもヨシュアがそんなことをしていたなんて信じたくない、でも彼はあまりにも出来過ぎたタイミングで姿を消してしまった。これでは彼がスパイかもしれないという疑惑を晴らすことはできない。
「待てよおっさん、アンタそれを知っていてヨシュアを放置していたのか?何であいつを放っておいたんだ」
アガットの言葉にカシウスは黙ってしまう。確かにそこまで知っていたのならヨシュアを捕まえたり監視しておくこともできたはずだ。でもカシウスはそれをしなかった。
「……信じたかったんだ、ヨシュアの事を」
カシウスは目を閉じて悲しそうな声色で話し出す。
「ヨシュアを保護した後、俺は事情を聞き出そうとした。だがヨシュアは記憶を失っていたんだ」
「記憶を……」
「最初は演技だと警戒した。だがヨシュアの虚ろな目がレナの亡骸を抱いていたエステルの目と重なってしまい疑うことが出来なくなってしまった」
「あっ……」
「先生……」
「……」
カシウスの言葉にエステルは悲しそうな表情を浮かべてシェラザードとリィンも何かを感じ取ったかのような神妙な表情を浮かべる。レナって言うのはエステルのお母さんなのかな……
「俺はずっと後悔していた。妻を守れなかったことを、娘に深い悲しみを味合わせてしまった事を……その罪滅ぼしも含めて俺はヨシュアを義息子として育てようと思ったんだ。エステルと共に成長していくヨシュアを見て俺はいつかエステルと特別な家族
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