本編
本編5
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っていたのは、私が持っていたのと、同じものがもう一つ。まだ子供だった私には、そのネックレスが普通の何倍もキラキラ輝いて見えた。
『このネックレスはね、私の大切な人との思い出のものなのよ』
『大切な人?』
『そう、忘れられない人よ。だからね』
おばあちゃんはそう言って、私の手のひらに二つのネックレスを握らせた。
『この片方を、ツグミの大切な人に渡してほしいの。もちろん、片方はあなたが大事に持っていてね』
『うん、わかった!』
そのあと私は、そのネックレスの一つをつけて、もう一つを大事に握りしめて、アオイの元へ走った。子供の頃の話だから、ただ一番大好きな友達に渡して、おばあちゃんとの約束を守ろうと急いだだけだったように思う。おばあちゃんが言った大切な人というのとは、少し意味が違っていた。
『アオイ、これあげる!』
『なにこれ?』
『ネックレス! 私の大切な人にあげなきゃいけないんだって』
アオイは一瞬驚いたように固まったが、笑顔で受け取ってくれた。
『ありがとう! きれいだな』
『えへへ。おそろいだよ!』
そう言って自分の首元にあるネックレスを見せたとき、アオイが照れ臭そうに笑ったのを、なんとなく覚えている。
『でもいいのか?おれがもらっちゃって』
『うん。だって、アオイは私の一番の友達だもん!』
『そっか』
今思うと、アオイは「大切な人」の意味を、少なからず私よりはわかっていたのだろうと思う。嬉しそうだったけど、最後は少し眉を下げて、困ったような顔をしていた。言おうか言わまいか、迷っていたのかもしれない。
でも……だとしたら、アオイはわかっていて受け取ってくれたってことになる。それって、なんだか……。
そう思ったとき、何かが薔薇の花束に向かって飛んできた。驚いて顔を上げると、花束の上に何かが刺さっているのが見える。かなり深く入り込んでしまっているようだった。
「え……なに? なんで? どこから?」
いきなりの出来事に当惑しつつ、部屋の中をキョロキョロと見回す。誰もいないし、何もない。窓も閉まっているから、風も入ってきていない。
少し怖くなった私は、とりあえず刺さったものが何なのか確認することにした。パッと見たところ、小さい紙かなにかのようだった。
恐る恐る引き抜いてみると、何か書いてあることに気づく。それはカードのような少し硬めの紙で、その真ん中にはシルクハットを被った人の、可愛らしい絵文字のような絵が描かれていた。
「こ、これって……」
内心期待に胸を踊らせながら裏を向けると、一週間前にちょうど見たような文章が書かれていた。
『今宵 あなたのもとに 盗んだものを返しに参ります 怪盗キッド』
「また、来てくれ
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