第五十一話 王子の旅立ち
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「それはですね。食料を六ヶ月分と水を一週間分ですね。後は風石に石炭、弾薬といった所です」
「水と石炭に関しては、学術団が協力してくれる手筈になっている。無論、僕も協力するけどね」
前出したが、魔法で海水を飲料水に変える事で水の心配は要らなくなった。そして、蒸気機関に必要な石炭は『錬金』で作り出すことが可能だ。
火の魔法の使えないマクシミリアンは、海水を飲料水に変えることは出来ても、水をお湯に変えることは出来ないし、鋼を錬金することが出来ても石炭は錬金することが出来なかった。
魔力無限をいうチート能力でも、その辺りの事情は如何ともし難たかった。
「お陰で開いたスペースを食料に割り振ることが出来ました」
「未知の領域を旅する計画だからね。食料は大いに越したことは無い」
「そうですね」
そんな時、マクシミリアンの目に奇妙なものが移った。
「ん? あれは馬か?」
マクシミリアンが指差す方には、二頭の馬が人夫に手綱を引かれてタラップを上っていた。
「はい、馬も乗せます。陸では荷馬や馬車を引かせますし、場合によっては非常食として利用します」
「なるほど馬車も」
「御意」
馬はベルギカ号の最深部に設けられた飼育室に入れられた。
馬の他にも乳牛などの家畜も乗り込み、これで毎朝ミルクにありつける事が出来る。
満足したマクシミリアンは自室に戻ろうとすると、見知った金髪頭が数人の男達と共にタラップを昇っているのを見た。
(あの金髪はアニエスか?)
「コマンド隊の面々ですね。任務は殿下の護衛と陸上での偵察と聞いております」
マクシミリアンがタラップの方を見ているのを察し、ド・ローテルがマクシミリアンに教えた。
「僕の護衛? セバスチャンも居るから不用だと思うんだが……まあいいや、会ってみよう」
「では、その様に取り計らいます」
「任せるよ。しかし何だな。艦長もフネの仕事があるというのに、僕の秘書官みたいな事もさせて申し訳なく思っている」
「私は気にしていません。どうかお気になさらずに」
「すまない」
こうして、出航前の喧騒は過ぎていった。
マクシミリアン一行は、ベルギカ号に乗り、逃げ場所を探す為にアトランティウム洋を渡る旅はこうして始まる。
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